2000 Fiscal Year Annual Research Report
赤芽球及び巨核球の成熟分化過程を制御する機構の解明
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11680713
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Research Institution | RIKEN Institute |
Principal Investigator |
永田 由香 理化学研究所, 分子細胞生物学研究室・協力研究員(研究職) (40281620)
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Keywords | 巨核球 / トロンボポエチン / G蛋白質シグナル伝達系 / RGS蛋白質 / SDF-1 |
Research Abstract |
巨核球の増殖や分化を制御する新規因子を探索する目的で、マウス骨髄細胞から精製した巨核球を用いて、巨核球の増殖や分化を制御しているトロンボポエチン(TPO)により発現する因子のcDNA断片をPCR-Subtraction法により14クローン単離した。今年度はそのうちの一つをプローブとして、マウス巨核球由来cDNAライブラリーから、235残基のアミノ酸からコードされる分子量約27kDaの新規RGS(regulator of G protein signaling)蛋白質を単離した。RGS蛋白質は、G蛋白質シグナル伝達系の新たな負の調節因子として近年注目を浴びている因子で、現在、ほ乳類では20以上の分子種の存在が報告されており、それをRGS18と命名した。マウスの様々な組織におけるノーザンブロット解析では、弱いながら脾臓と肺でのみ発現が認められた。そこで、他のRGS蛋白質と相同性のないN末側のペプチドに対するラット・ポリクローナル抗体を作成し、間接蛍光抗体法により脾臓切片における発現を調べたところ、巨核球に特異的な発現が認められた。FACSを用いて集めた各骨髄造血細胞においても、リンパ球系と赤血球系をのぞいて発現が認められ、弱いながら造血幹細胞にも確認された。また、RGS18のC末端側にはGRKと呼ばれるG蛋白質αサブユニット(Gα)と結合するアミノ酸モチーフが認められ、実際in vitro結合実験でGaiとGαqに特異的に結合し、それらに対してGAP活性を有することが判明した。さらに、TPO共存下で巨核球のコロニー形成を促進するケモカインであるSDF-1が、GαqではなくGαiとRGS18との結合に影響を与えることが判明した。
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[Publications] Nagata,Y., et al.: "A novel regulator of G-protein signaling bearing GAP activity for Gαi and Gαq in megakaryocytes."Blood. (印刷中). (2001)
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[Publications] 永田由香 ほか: "分子細胞治療「赤血球/巨核球の分化制御シグナル」(印刷中)"先端医学社. (2001)
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[Publications] 永田由香: "生体の科学「ノックアウトマウスリスト;神経系転写因子制御因子」"金原一郎記念医学医療振興財団/医学書院. 2 (2000)