2001 Fiscal Year Annual Research Report
配偶子間相互作用を司る分子の構造と機能に関する研究
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11680716
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
漆原 秀子 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (00150087)
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Keywords | 細胞性粘菌 / 有性生殖 / 配偶子間相互作用 / 細胞融合 / 多重遺伝子 / 差分化ライブラリー / EST |
Research Abstract |
細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum の有性生殖における配偶子間相互作用の分子機構に関して、以下の研究を行なった。 1.GP138遺伝子ファミリーの解析: 昨年度までに作製したGP138遺伝子ファミリーの4種類の遺伝子、GP13A,GP138B,GP138C,GP138Dのすべてを破壊した完全欠損株、及び各々の過剰発現株について、表現型解析を行なった。完全欠損株は予期に反して増殖、無性的・有性的発生に何ら異常を示さなかった。完全欠損株でタンパク質の発現が確認されたことから、細胞融合阻害交代の標的分子は別に存在する可能性が浮上した。一方、完全欠損株で、無性的・有性的発生過程で発現が誘導される遺伝子33種類について発現パターンを解析したところ、無性的発生で形成される予定胞子細胞に特異的な遺伝子の発現が減少、あるいは遅滞することが示され、GP138遺伝子ファミリーは無性的発生過程で機能していることが示唆された。 2.配偶子特異的遺伝子プールの構築と解析: 性的に成熟した配偶子で発現している細胞の mRNA から、未成熟な細胞で発現している細胞の mRNA を差し引いた差分化ライブラリー(FC-IC)を、SSH法で構築し、全ライブラリー901 クローンの構造解析を行なった。これらのクローンは 276 の非重複遺伝子に由来し、約 1/3 が無性世代の細胞性粘菌 EST 約 80,000 配列に含まれない新規なものであった。また、ランダムに選んだ 45 遺伝子について発現を調べたところ、53%が配偶子特異的であり、代謝関係のハウスキーピング遺伝子の割合も激減するなど、差分化ライブラリーとして極めて有用なものであることがわかった。相同性検索によって有性生殖への関わりが強く示唆されている他生物の遺伝子もヒットしており、現在それらについて詳細な解析を進めている。
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