Research Abstract |
活性化PKCの伝達物質放出増強の分子機構を明らかにするために、活性化PKCの細胞内受容体であるRACK1の役割に注目し,副腎髄質クロマフィン細胞を用いて以下の実験を行った。 1)免疫組織化学実験:RACK1は主に細胞膜直下に局在しており,F-actinと同じ局在を示した。クロマフィン細胞にはPKCα,β,ε,ζ,が存在しており,静止時には細胞質に局在している。TPAによりPKCを活性化させた細胞ではRACK1結合部位であるC2領域を持つPKCα,βだけが細胞膜直下へ移行し,RACK1と同じ局在を示した。Micalolide B(MLB)処理を行い,細胞内F-actinをすべてmonomerに解離させた場合,細胞膜直下のRACK1の消失が観察され,PKCα,βの移行が見られない。一方,F-actinを短いfilamentに切断するCytochalasin D(CD)処理細胞では,RACK1は蛍光染色強度が減少するが,細胞膜直下に局在し,PKCα,βの移行が観察された。 2)免疫沈降実験:抗RACK1抗体による免疫沈降実験では,control細胞ではRACK1とともにactinが共沈し,TPA処理細胞では加えてPKCαとβが共沈した。また,RACK1が局在するTriton-insoluble fractionをMLB処理した場合actinとRACK1が共に遊離することから,RACK1がF-actinと結合していることを示唆した。以上の結果,RACK1は細胞膜直下のF-actinに結合しており,活性化PKCα,βのRACK1を介したF-actinへの結合が示唆された。 3)分泌測定実験:活性化PKCは開口放出におけるプライミング過程を増強している。この増強作用はPKCαとβの活性化が担っていることを特異的阻害剤,活性化剤を用いて明らかにした。また,MLBはTPAによる分泌増強作用を阻害し,一方,CDは影響を及ぼさなかった。以上の結果より,活性化PKCα,βのRACK1を介したF-actinへの結合が活性化PKCの伝達物質放出増強に重要であることが示唆された。
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