2000 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン神経ネットワーク形成異常とストレス作用-母体への騒音ストレスの性に依存した影響の解析-
Project/Area Number |
11680769
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Research Institution | FUKUYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西尾 廣昭 福山大学, 薬学部, 教授 (30034036)
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Keywords | 騒音ストレス / 新生児ラット / 情動行動 / 学習獲得能 / 性差 / セロトニン / トランスポーター |
Research Abstract |
妊娠ラットへのストレスが新生児の発育過程における神経化学的指標に対して、雌雄差を伴う影響を及ぼしている可能性を検討した。5-HT神経機能の神経化学的指標として5-HTトランスポーター(5-HTT)に対するリガンド結合活性の解析を行った。また、情動行動学指標として自発運動量の測定ならびに学習行動学的指標としては、新たに高架式Y字迷路学習法、8方向放射状迷路法、自発交替行動試験法により各群間での比較を行なった。妊娠ラットへの騒音ストレスの影響は、雌雄別に評価した。妊娠ラットは、正常群(NN群)、騒音ストレス群(NS群)、強制水泳ストレス群(SS群)ならびに騒音+強制水泳ストレス群(NSS群)の4つのグループに分けた。【実験結果】(1)5-HTT結合活性において、生後1週目の雄NSS群ならびに生後11週目の雌NSS群において増大することが認められた。(3)雄新生児の自発運動量は、NN群に比較して、NS群、SS群、NSS群において測定前にブザー騒音を付加することにより大きく抑制されたが、雌新生児においてはこのような傾向は認められなかった。(4)8方向放射迷路実験において、母体ラットへのストレスは、雄新生児ラットにおける参照および作業記憶障害を引き起こす傾向が認められたが、実験例数の不足のため明確な結論は得られなかった。(5)高架式Y字迷路法による新生児ラットの不安状態の評価を行ったが、NSS群からの雌新生児ラットにおいてC-O潜時の延長傾向が認められた。(6)自発交替行動試験により記憶障害の評価を行ったが、各群、雌雄ともに大きな変化は認められなかった。【考察】妊娠中のラット母体に対するストレス性刺激が、それらからの新生児の発育過程における情動反応および学習反応に影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。これらストレスの影響に関して、新生児の雌雄間において若干の違いも認められた。より明確な結論を得るためには、実験例数を追加していく必要があるも思われる。
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[Publications] Hiroaki Nishio,Shigeo Kasuga,Mitsuyasu Ushijima & Yasuo Harada: "Prenatal stress and postnatal development of neonatal rats - sex-dependent effects on emotional behavior and learning ability of neonatal rats"International Journal of Developmental Neuroscience. 19(1). 37-45 (2001)