2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11680807
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
小山 なつ 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (50135464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 和彦 福岡大学, 医学部, 助手 (30238357)
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Keywords | メリチン / 疼痛 / サーモグラフィー / 軸索反射 / 交感神経反射 / アロディニア / 帯状疱疹後神経痛 / ラット |
Research Abstract |
ミツバチの毒には、メリチンやアパミンを含む多くの成分が含まれる。ハチ毒による痛みについて研究するために、平成11年度には、ヒトの前腕およびラットの足底皮膚にメリチンを微量注入すると、神経性に皮膚温が上昇することを確認した。平成12年度はそれらの研究をさらに発展させた。ハチ毒全体およびメリチンをラットの足底に微量注入すると、注入部位周辺の皮膚温が上昇したが、アパミンを注入したときは、上昇がみられなかった。発痛物質はアパミンではなく、メリチンであることが再確認された。また、メリチンを後根神経節および坐骨神経に注入すると、足蹠は浮腫を伴わずに皮膚温が上昇した。メリチンによる皮膚温の上昇は血管に対する直接作用ではなく、神経性の反応であることが確認された。 健康被検者では、メリチンによって誘発される痛みと注入部位の皮膚温上昇には時間差がある。皮膚温上昇は痛みよりも遅れて始まる。そこで、前腕にメリチンを微量注入し、交感神経の分布が多い手掌の皮膚温の変化をサーモグラフィーで記録した。手掌、特に指尖の皮膚温は、メリチン注入後、痛みの時間経過に対応して一過性に下降し、その後、注入前より上昇した。メリチン注入前の手掌温度には著しい個人差があったが、皮膚温の低い被検者ほど下降に続く上昇が大きかったので、10分後には皮膚温のばらつきが減少した。手掌温の下降は体性交感神経反射であり、下降に続く上昇は交感神経活動の抑制解除によるものであると示唆された。 無髄C神経線維終末から放出されるCGRPによって生じる皮膚温の上昇も、体性交感神経反射も痛みによって誘発される反応である。本研究で、サーモグラフィーを利用して、痛みに伴う皮膚温の変化の広がりと程度を解析した。メリチンの微量注入は、副作用を伴ずにヒトおよびラットで実施できるテストであることがわかり、今後痛みの研究に寄与できることを確認した。
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[Publications] 小山なつ,横田敏勝: "侵害受容の系統発生"日本生理学雑誌. 61(7・8). 261-278 (1999)
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[Publications] 平田和彦,比嘉和夫: "帯状疱疹"臨床と研究. 76. 1915-1919 (1999)
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[Publications] 平田和彦,比嘉和夫: "帯状疱疹"ペインクリニック. 20. S40-S46 (1999)
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[Publications] Koyama N.,Hirata K. et al.: "Computer-assisted infrared thermographic study of axon reflex by intradermal melittin"Pain. 84(2・3). 133-139 (2000)
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[Publications] 平田和彦,比嘉和夫: "疼痛対策(ペインクリニック)"日本臨床. 58(4). 951-956 (2000)
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[Publications] 小山なつ,横田敏勝: "神経成長因子と痛み"日本ペインクリニック学会誌. 7(2). 103-115 (2000)