2000 Fiscal Year Annual Research Report
日中古代青銅器および土器の産地に関する自然科学的研究
Project/Area Number |
11691040
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
今村 峯雄 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 教授 (10011701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (60270401)
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (50218161)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助教授 (50205663)
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Keywords | 産地分析 / 青銅器 / 土器 / 原始瓷器 / 鉛同位体 / ベリリウム同位体 / 放射化分析 / ICP-MS |
Research Abstract |
従来、人・物の移動の視点からの実証的研究が少なかった中国出土の青銅器・土器等遺物について自然科学的方法に基づく産地分析を行い、日本の遺物と比較検討した。 青銅器ではSEM-EDSによる主成分組成、ICP-MSによる微量成分組成、鉛同位体比の分析を行なった。 1)湖北省盤龍城遺跡出土青銅器では、商代の他の青銅製品に多い、高放射性起源の鉛を含む例が数多く検出された。雲南省の鉛鉱石試料分析結果などに基づいて地球化学的に検討すると、従来の説にある四川省、雲南省、貴州省の境界付近とする説は成立し難く、近くに商代遺跡の多い秦嶺山脈周辺の可能性が高い。 2)北京市郊外の西周瑠璃河燕国墓地出土青銅器では、鉛同位体比は日本に舶載された前漢鏡と同様の数値を示し、中国華北を産地とする原料が使用されたと考えられる。 3)新分析法として、ICP-MSによる、青銅器および製錬滓中のスズの同位体比測定を試み、産地(鉱山または地域)による違いが存在する可能性が示された。 土器については、中国の長江、黄河流域10遺跡からの、主として商代から周代にかけての土器・原始瓷器を対象に、放射化分析による元素組成とベリリウム同位体分析に基づく地域性抽出を行った。これらの結果を基に以下5つのケースについて両者の方法の比較を行った。 1)同遺跡の形状の異なる土器での比較。2)同遺跡の様式の異なる土器。3)異なる遺跡から出土した様式の重なる土器。4)近接する遺跡から出土した原始瓷器。5)商から西周にかけての遺跡から出土した原始瓷器。その結果、多くの場合、放射化分析によるグルーピングは、ベリリウム同位体によるグルーピングと同様な結果を示すことが多く、かつ両者の方法を組み合わせることにより、土器や原始瓷器の産地をより詳細に検討することが可能であることが示された。また、生産地の、時代による変遷に関する情報等も得られた。
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