1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11691067
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Section | 一般 |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂野 達郎 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教授 (40196077)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
劉 継生 創価大学, システム科学研究所, 研究員 (20277875)
|
Keywords | 中国 / 山東省 / 黄河三角州総合計画 / 地域戦略 / 計画委員会 / 戦略的計画過程 |
Research Abstract |
本研究は、地方政府として省に焦点を絞り、中国における地域戦略策定過程の実態を明らかにすることを目的とし、山東省の黄河三角州総合開発計画策定についてケーススタディを行った。ケーススタディは、山東省計画委員会、国土管理局、並びに東栄市計画委員会黄河三角州開発弁公室の担当者に対するインタビューを中心に約1週間にわたる現地調査に基づいて行った。当初のもくろみである、非定型的な意思決定に影響力があると思われる共産党委員に対するインタビューは、再三の依頼にも関わらずうまくいかなかった。インタビューの結果、(1)参加主体の特定、(2)主要な決定事項、(3)イベントの特定、(4)関連法案の特定とその内容の把握を行った。 その結果、最終的結論をまとめる段階にはきていないものの、以下の結果を得ている。(1)黄河三角州総合開発計画には、山東省と東栄市の管轄する実質的に二つのプロジェクトがあり、それらはあまり統合されていない。東栄市の計画が油田を中心にした工業団地を作ることを目的としているのに対して、山東省は東栄市の周辺町村の農業開発を目指している。両者の利害は、必ずしも一致していない。(2)その理由として、東栄市に立地する油田会社は国営であり、省の権限が及ばない上に、石油会社が道路等に関するインフラ整備に必要な資金を独自に負担できること、さらには石油会社から得られる税金のため東栄市は政治的にも財政的にも省に対して独立していることが挙げられる。(3)山東省における事例研究からは、次のことが明らかになった。事業の実施において直接的に参照されるのは、5か年計画と単年度計画であり、超長期計画である発展戦略と国土計画は、間接的にしか参照されていない。(4)東栄市の計画委員会は、豊富な財源をもとに、様々なプロジェクトの決定権を握っており、新規プロジェクトはほぼ完全に計画委員会が掌握している。改革開放政策が一層進む中で地方への分権化は進みつつあるが、地方政府の計画委員会の投資決定権を中止にした権限は、当分集中したままと予想される。これは、改革開放政策のもう一つの柱である、公営企業の民営化の妨げになるおそれがある。
|