2000 Fiscal Year Annual Research Report
ブータンヒマラヤの生物分布帯に関する生態学的研究第3次
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11691173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大沢 雅彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (80092477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60273827)
江口 卓 高知大学, 人文学部, 教授 (30263966)
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Keywords | 標高 / 温度 / 段丘地形 / 乾湿条件 / 群落構造 / 樹形 / 芽タイプ / フェノロジー |
Research Abstract |
今年度の現地調査は5-6月と8月に行った。調査内容は気候要因に関してはデータロガーのデータ回収、新たな観測地点の設置、現地調査期間中の気象要素に関するデータ収集である。地形学的調査はモ・チュ谷に沿った地点での露頭観察と植生調査パーマネントプロットでの地形生成過程の調査を行った。植生に関しては昨年度設置したパーマネントプロットの拡張、フェノロジー調査と樹形計測の継続、新たな環境傾度に沿った調査プロットシリーズの設置などである。気象観測に関しては雲霧林が発達するドチュラ(標高3000m)から乾燥谷の谷底のツァン・チュウ(1200m)にかけた地点で行い、気温特性、逓減率、空中湿度、降水量の季節変化について解析した。地形に関してはツァン・チュウでみられる段丘面の堆積物とその時代決定を行っている。植生に関しては乾燥谷-雲霧林傾度(標高傾度でもある)での立地特性と森林の推移に関して組成的、構造的に調査を行っている。乾燥した西向斜面では土壌水分が12-29%、湿潤東向斜面では29-46%であった。乾燥西斜面では雲霧林からはずれると急激にマツーナラ林へと変化する。湿潤斜面ではカシ類を主体とする湿潤林であるがさらに低標高になり乾燥するツァンチュに向かって行くと土壌水分はさらに低下し、1800m付近では17%と低くなる。種多様性の変化は多様で、標高、尾根-谷傾度のほか森林に対する人為影響によっても大きく変化した。これに関してはさらに多くの調査プロットが必要である。日本から連続する常緑広葉樹林の特性を芽、葉、分枝などで比較するとブータンでは芽タイプはヒプソフィル芽が多く、中部日本と大差ないが、同時枝、全縁葉が多くより熱帯的な特性を強く示した。シュートフェノロジーに関してはこれまで50種、150本の枝にマーキングを行い、季節現象を記録している。フェノロジー特性としてはまだ、開始したばかりで傾向ははっきりしていないが、多くの樹種は日本と同じ4-5月に一斉開葉している。標高傾度に沿った変化は標高1700m付近では2-3月に開葉するものが多く、3000mになると4-5月になった。この2地点は約8℃の温度差なので、8℃で2ヶ月の開葉時期のずれとすれば、ほぼ日本で得られている値と同じである。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Bhuju,DR & Ohsawa,M: "Patch implications in the maintenance of species richness in an isolated forest site"Biological Conservation. (In press).
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[Publications] Nitta,I & Ohsawa,M: "Geographical transition of sylleptic/proleptic branching in three Cinnamomum species with different bud types"Annals of Botany. 87. 35-45 (2001)
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[Publications] 大沢雅彦: "土壌と植生-土壌-植生系の進化地理-"ベドロジスト. 44・2. 124-127 (2000)
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[Publications] Nitta,I & Ohsawa,M: "Phenological and bud morphological traits of evergreen broad-leaved trees under the strong seasonal climate at northern limit in East Asia"Proceedings of International Symposium on the Qinghai-Tibetan Plateau. Chinese Academy. 357-364 (2000)
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[Publications] Tang,CQ & Ohsawa,M: "Transitional pattern of tree leaf-types from tropical to temperate forests on Mt.Emei."Proceedings of International Symposium on the Qinghai-Tibetan Plateau. Chinese Academy. 397-407 (2000)
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[Publications] 大沢雅彦: "熱帯と温帯の比較-生態系の機能的側面-"Tropics. 9・3. 167-168 (2000)
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[Publications] 大沢雅彦(監修・分担執筆): "生態学から見た身近な植物群落の保全"講談社(印刷中). 300 (2001)
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[Publications] Ohsawa,M.,Eguchi,T.,Takada,M.,R.Pradhan,P.Wangda, et al.: "Life zone ecology of the Bhutan Himalaya III. -An interim report 2001-"Japanese Coordinating Committee for MAB (印刷中). (2001)