2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11691195
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚谷 裕一 岡崎基礎生物学研究所, 助教授 (90260512)
岡田 博 大阪市立大学, 理学部, 教授 (40089892)
加藤 雅啓 東京大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20093221)
吉田 彰 財団法人進化生物学研究所, 主任研究員 (70090933)
|
Keywords | 一葉植物 / イワタバコ科 / ウシノシタ属 / モノフィレア属 / 形態形成 / 分子系統解析 / 進化 / 子葉 |
Research Abstract |
昨年までの本調査・研究から、ウシノシタ属とモノフィレア属では、発芽後に胚軸の末端から形成される第一根は胚根(一次根)と、2枚の子葉の間に形成される溝分裂組織は茎頂と相同であることが示された。一方、子葉の大型化をもたらす基部分裂組織の起源については、未解決のままであった。分子系統解析からは、ウシノシタ属では少なくとも1回は有茎型から一葉型への進化がおきたことが推定される。そこでウシノシタ属有茎種と、イワタバコ亜科のチリタ属(外群)の個体発生を比較した。これらでは大型子葉が一定の大きさになった時、基部分裂組織が消失し成長が止まった。そして異形子葉化後すぐに茎頂が発達し、大型子葉に似た普通葉を作った。しかも普通葉は、一般の植物の葉身にみられる介在成長を示さず、基部でさかんに成長した。このような普通葉の成長様式が、イワタバコ亜科に独特のものであるかどうか明らかにするため、本年度はブラジルで調査を行い、イワギリソウ亜科の同形子葉種の試料収集を行った。本亜科の種子は属によるサイズのばらつきが大きいが、小形のものでは胚はやはり未熟な段階で止まっており、発芽後の子葉の展開様式は、イワタバコ亜科と同様であった。しかし子葉基部に基部分裂組織が形成されなかった。また普通葉の基部にも分裂細胞群はみられなかった。基部分裂組織の起源については、本来の茎頂の細胞分裂能力が子葉基部に異所的に発現したものとする考えが提出されており、分子遺伝学的解析を進めているが、この説を積極的に支持するデータは未だ得られていない。むしろ分子系統解析と比較形態形成解析からは別の説が支持されると考えられる。すなわちイワタバコ亜科のクレードが分かれた時に、普通葉が独自に、基部で成長するという形態形成様式を獲得し、さらに子葉でその特殊化が進み基部分裂組織が確立したとするものである。そして一部の植物群で、初期の個体発生速度が極度に遅くなったため、茎頂形成が栄養シュートを作る間もなく直接花序に分化してしまうようになり、その結果一葉植物が進化した可能性が高い。
|
-
[Publications] Imaichi, R., IKnokuchi, S., Kato M.: "Developmental morphology of one-leaf plant Monophyllaea sigularis (Gesneriaceae)"Plant Systematic and Evolution. 229. 171-185 (2001)
-
[Publications] 今市 涼子: "一葉植物(イワタバコ科)の起源と形態進化"Plant Morphology. 13. (2002)