2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11691198
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
神田 啓史 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 教授 (70099935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖津 進 千葉大学, 園芸学部, 教授 (70169209)
増沢 武弘 静岡大学, 理学部, 教授 (40111801)
小島 覚 東京女子大学, 文理学部, 教授 (80115138)
和田 直也 富山大学, 理学部, 助教授 (40272893)
中坪 孝之 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 助教授 (10198137)
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Keywords | 氷河後退域 / 植生 / 繁殖 / フェノロジー / 雪解け / 性表現 / 一次生産量 / 光合成 |
Research Abstract |
(1)氷河後退域の植生 1997年にニーオルスンにおいて植生の将来変化を追跡するため永久方形区を設置し、2年後、出現する維管束植物の被度を確認した。その結果、ムラサキユキノシタはサブコドラートの数で33から56へ、キョクチヤナギは78から91へ、ムカゴトラノオは60から76へと増加した。全体に減少した植物は見られなかった事により、調査地区は未だ遷移段階の比較的早い時期にあり、現在もまだ植物の侵入が引き続いているものと考えられた。 (2)氷河後退域の維管束植物の繁殖生態 雪解けの傾度に沿ったムカゴトラノオとチョウノスケソウの成長と繁殖について調査観測を行った。ムカゴトラノオでは準備段階であるプレホーメションから予測した結果、野外でのフェノロジー調査と生育途中での摘葉実験から、地上に展開する葉の数や、ムカゴの数の決定時期が、雪解けの異なる個体群間で異なっている可能性が示唆された。一方、チョウノスケソウの性表現を亜寒帯のアビスコ、寒帯のロングイヤービンと高緯度北極のニーオルスンにおいて解析された結果、性表現は緯度によって異なることが示唆された。 (3)氷河後退域の蘚類の生理生態 ニーオルスン地域の蘚類の一次生産量を推定した結果、30日間の生産量は群落一平方メートル当たり、9gになった。南極を含めても非常に少ない生産量であることが推察された。さらに、調査地域に最も広く分布しているカギハイゴケはコロニー形態に応じて水分光合成特性が異なり、乾燥タイプは湿性タイプと比べるとより少ない水分で最大光合成活性を実現できるなど興味深い結果が得られた。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 片村文宗,佐々木尚子,杉田真哉,末田達彦: "中央シベリア、バクタ川流域における花粉組成の変遷"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 末田達彦,日下部朝子,都築勇人,Danilin,I.: "航空レーザー測距法による中央シベリアの森林蓄積・葉面積調査"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 都築勇人,日下部朝子,末田達彦: "シベリア、エニセイ河中流域亜寒帯林の現存量"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 小島覚: "Ny-Ålesundに設置された永久方形区で観察された2年間の植生変化"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 西谷里美,増沢武弘: "雪解けの傾度に沿ったムカゴトラノオのプレフォメーション"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 和田直也,元木博人,神田啓史: "雪解け傾度に沿ったチョウノスケソウの性表現と種子生産の変化"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 村岡裕由,内田雅己,別宮有紀子,中坪孝之,上野健,神田啓史,小泉博: "ニーオルスンに占有するSalix Polaris(polar willow)の光合成特性"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 内田雅己,村岡裕由,別宮有紀子,中坪孝之,上野健,神田啓史,小泉博: "北極ニーオルスン氷河後退域における蘚類の一次生産量の推定"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 上野健,内田雅己,村岡裕由,伊村智,神田啓史: "異なる水環境に生育するカギハイゴケの水分光合成特性"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] 星野保,東條元昭,神田啓史,扇谷悟,森田直樹,佐原健彦,石崎紘三: "北極圏におけるpythium属糸状菌によるコケ病害と植生との生態学的関連性について"第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] Kubeckkova,K.,Elster,J.and Kanad,H.: "Periphyton ecology of glacial and snow-fed streams, Ny-Ålesund, Svalbard : the influence of discharge disturbances due to sloughing, scraping and peeling."第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)
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[Publications] Kubeckova,Kastovsky,J.,Elster,J.and Kanda,H.: "Diversity of soil algae along the East Brodgger deglaciated modaine, Ny-Ålesund, Svalbard."第23回極域生物シンポジウム(平成12年12月7日〜8日開催、国立極地研究所). (2000)