1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710008
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
末永 高康 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (30305106)
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Keywords | 先秦思想史 / 儒家思想 / 性説 / 出土文字資料 / 郭店楚墓竹簡 |
Research Abstract |
本申請研究の本年度における主たる成果は、郭店楚簡の性説、特に、「性」について多言する『性自命出』の性説を分析し、その性説の背後にある「性即気の思考」の性格を明らかにした点にある。ここで「性即気の思考」とは、「性」を喜怒哀悲の「気」と等置する『性自命出』の思考に対し申請者が与えたものであるが、このような「性」の実質を「情」に見出す思考は、従来の研究においては性悪説的な思考に分類されるべきものであった。しかるに『性自命出』の性説はその本質においてむしろ性善説的な思考に属するものである。そこで、性善説的思考、性悪説的思考に対して、従来の不備を補う新たな定義を行うことを通じて、「性即気の思考」の上に性善説的な『性自命出』の性説を再構成し、この思考がむしろ性善説的な思考に親和的であることを示した。また、その過程において、この思考を前提にして性善説的な立場を取った場合には、われわれが常識とするような理性と感情といった対は成立せず、いわゆる知的作用もまた情的な作用として処理されることを示し、この思考のわれわれの思考に対する特異性を明らかにした。その詳細については研究発表欄に掲げた「性」即「気」-郭店楚簡『性自命出』の性説」を参照されたい。 なお、計画に示した、郭店楚簡の訳注作業については、内外の研究者による注釈的研究が陸続と発表されつつある現状に鑑み、篇毎に順次訳注を完成させていくという当初の計画を改め、当面は、楚簡全体にわたって各種の注釈的研究を収集・分析することに努め、訳注については、内外における注釈的研究が一段落した後に、それらを総合してその完善を期することとした。
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