1999 Fiscal Year Annual Research Report
オリゲネスとニュッサのグレゴリオスにおける「生成の論理」と「存在の論理」の研究
Project/Area Number |
11710013
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
土井 健司 玉川大学, 文学部, 講師 (70242998)
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Keywords | 「生成の論理」 / 「存在の論理」 / 人間中心主義 / 自然 / 創造 / 感謝 / 神の模倣 |
Research Abstract |
本年度はオリゲネスにおける「生成の論理」と「存在の論理」について、彼の人間中心主義(神は万物を人間のために造った)を彼以前の教父と共に考察し、論文「ギリシャ教父と自然世界―サクラメンタルな自然観と人間中心主義―」を著した。 教父における人間中心主義はおおよそ次のようにまとめることができる。今日の人間中心主義の問題が、自然は自然自身のためか、人間のためかという二者択一として立てられるのに対して、教父の場合自然は神のためか、人間のためかという問題であり、自然は神のためではなく、人間のために造られたということになる。この思想には次のようなニ種の論理が働いている。神は自足的存在として、世界を必要としたわけではない。従って、神は、神であるにもかかわらず、即ち自足的であるにもかかわらず、世界を造った。この「にもかかわらず」から、あるいは創造という行為から神の善性が、われわれにとっての神の善が生起する(「行為の論理」[=生成の論理])。創造は神のためではなく、われわれのためであるからである。ここに創造に対する感謝という契機が生じる。そして神は善なる方であることから、次のような論理も生まれる。神は、神であるから、即ち善なる方であるから、世界を造った(「存在の論理」)。ここに善なる神の模倣という契機が、即ち霊的倫理的契機が生じる。世界を造った善なる存在の似像として、人間は神の模倣として生きなければならないし、この限りで世界の中心にある。神は神であるにもかかわらず世界を創造し、この創造行為を原因としてわれわれ人間にとって善なる神になる。次に、そもそも神は善なる神であるから世界を創造した、という論理が生まれる。こうした神に関するニ種の論理が互いに緊張しつつ基盤になって、感謝と神の模倣を基にした教父の人間中心主義が展開されている。万物の支配もこの感謝と神の模倣という二つの契機を基にしている。
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