1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710016
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
蔵田 伸雄 三重大学, 人文学部, 講師 (50303714)
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Keywords | 体細胞核移植クローン技術 / ヒトクローン / 生命倫理 / 人工生殖技術 / 生殖の自由 / 科学技術倫理 |
Research Abstract |
本年度は米、仏、日本で発表された体細胞核移植クローン技術の人への使用に関する倫理問題及び法的規制について論じた報告書の内容を分析し、さらにこの問題に関する米英の文献の調査を行った。それによって、体細胞核移植クローン技術の人への使用に関する倫理問題を(1)特定目的での子の産出、(2)「生殖の自由」、そして胚使用に関する問題といった問題圏に分類・整理して、その考察を試みた。 (1)特定の表現形質を持つ児の意図的産生を目的としたクローン技術の使用は、生まれてくるクローン児の「自分の人生をより自由に選んでいく権利」を脅かしている可能性がある。それについては日本医学哲学・倫理学会第18回大会(広島大学1999年10月9日)において「体細胞核移植クローン技術がわれわれにつきつけている問題は何か-胚実験、代理母、人生と自由権、親であること-」というタイトルの発表で論じた(発表内容については投稿準備中)。 (2)体細胞核移植クローン技術の使用は、男女両性の遺伝子が関与しないという点で、体外受精、非配偶者間精子提供、代理母といった既存の人工「生殖」技術とは本質的に異なっている。よって「生殖の自由」という権利に訴えてクローン技術の人への使用を正当化しようとすることは「生殖の自由」という権利の濫用である。これについては日本生命倫理学会第11回年次大会(千葉大学1999年11月27日)において「体細胞核移植クローン技術の人への使用を規制する倫理的根拠」というタイトルで発表した(発表内容をまとめた論文は現在投稿中)。 また本年度は科学技術の倫理的コントロールに関する研究を行った。そして科学技術の弊害を防ぐためには、哲学者が「科学技術倫理」を通じて科学技術にコミットする必要があることを、「科学技術の社会的影響と我々の責任-科学技術倫理試論(中部哲学会年報第31号 印刷中)で論じた。
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Research Products
(1 results)