1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本及び中国の経変(経典変相図、経典絵)における図像交流の研究
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11710024
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Research Institution | Tokai Gakuen Women’s College |
Principal Investigator |
渡辺 里志 東海学園女子短期大学, 国文学科, 助教授 (30201180)
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Keywords | 経変 / 変相図 / 敦煌 / 仏伝図 / 涅槃図 / 涅槃変相図 / 牢度叉闘聖変 |
Research Abstract |
今年度本課題の研究を行うにあたっては、まず経変の宝庫である中国・敦煌に滞在し、莫高窟・楡林窟・西千仏洞の石窟壁画にみられる経変を調査した。特に、仏伝図、涅槃図、涅槃変相図、牢度叉闘聖変に重点を置いたが、あわせて法華経変・弥勒経変なども対象に入れた。敦煌では、莫高窟第332窟・第148窟・第158窟の涅槃変相図が重要であり、日本における涅槃変相図の成立と展開を検討するために有効であることが判明した。これに関して、浜松市美術館には代の涅槃変像碑が所蔵されており、これも調査を行った。この主題に関しては、さらに麦積山石窟第127号・第135号・第26号、山西省博物館蔵涅槃変像碑の検討も必要であり、来年度これらの調査を実施する予定である。日本の涅槃変相図は、あまり知られていない京都・二尊院本の調査を実施したが、来年度はよく知られた基準作である京都・万寿寺本、岡山・自性院安養院本、広島・耕三寺木等の調査を予定している。涅槃変相図は、これら中国・日本の作例の調査を十分済ませた上で比較検討し結果を発表したい。涅槃変相図のほか、涅槃のみ描いた涅槃図の調査も随時行っており、膨大な量の涅槃図の分類や展開に関する考察も予定している。涅槃図とともに仏伝図として重視される誕生図はあまり作例がないが、ほとんど唯一と思われる中国あるいは朝鮮半島作といわれている福岡・本岳寺本の調査が実現し、これについても日本の作例との関連について報告を行いたい。また、日本の仏伝図の中にしばしば描かれる牢度叉闘聖変も敦煌で大流行していて、日本と中国の図像交流の実体を知る上で有効な主題と考えており、来年度も引き続き調査を続けていきたい。なお、今年度の敦煌壁画調査では、法華経変や弥勒経変の中に仏伝図像がとり入れられていることがわかり、仏伝図の広がりが確認できて興味深かった。
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