1999 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における「心の理論」と自己発達の関連性について
Project/Area Number |
11710059
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
木下 孝司 静岡大学, 教育学部, 助教授 (10221920)
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Keywords | 自己認知 / 遅延ビデオ映像 / 心の理論 / 幼児期 |
Research Abstract |
3,4,5歳児を対象に,a)遅延ビデオを用いた自己認知課題とb)「心の理論」課題を実施した。a)の課題は,被験児に気づかれないように被験児の頭部にシールをつけ,その時のビデオ映像を約5分経過後に再生して,頭部のシールを発見して取るかどうかをみるものである。本研究では,この課題実施後,被験児自身がシールを発見した時点ならびに対面していた実験者がシールに気づいていた時点についても質問した。本研究より,以下のような結果が得られた。 1.遅延ビデオ映像を見て,シールを見つける被験児は,3歳児の約30%であったのに対して,4,5歳児の約90%が課題を通過した。ただし,自他それぞれのシール発見時点を質問したところ,その理解の程度に差がみられ,次の4つの自己認知達成レベルが確認された。レベル0:シール発見課題不合格,レベル1:シールを発見するが,シールをつけた人物とそれに自分が気づいた時点を特定できない,レベル2:実験者がシールをつけたことならびにそれをビデオ映像を見て自分自身気づいたことを自覚できるが,実験者の過去の認識状態を推測できない,レベル3:自己と実験者の過去における認識状態の相違を理解してシールを発見する。 2.自己認知達成レベル2以上の被験者は,自己映像を他者に見られることを忌避する傾向が強く,自己映像に自我感情を付与して"自分のこと"として受けとめていることが示唆された。 3.レベル0および1と,レベル2および3の間で,「心の理論」課題の成績に有意な差があり,時間経過による自他の視点の相違を理解した上での自己認知と「心の理論」の発達に関連があると言える。
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