1999 Fiscal Year Annual Research Report
公共性の存立と個人のボランティア意識との相互規定関係に関する研究
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11710081
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
八ッ塚 一郎 奈良大学, 社会学部, 助手 (10289126)
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Keywords | 社会的構成主義 / 社会的表象 / ボランティア / 公共性 / NGO / 阪神・淡路大震災 / 内容分析 |
Research Abstract |
社会的構成主義の理論的な基礎づけ作業を展開することにより、新聞記事や個々人の手記等を対象とした内容分析のための、概念枠組みと分析指針とを整理することができた。談話的過程や言語的表現過程に着目することの重要性は、S.MoscoviciやW.Wagnerら、ヨーロッパを中心とする社会的構成主義心理学の理論家が、つとに指摘してきた点である。これは単に、個人的な心情の吐露などといった、表面的な個人的心的過程の問題にとどまるものではない。個々人を規定するマクロレベルの事象、すなわち、世界観の形成や、人間の行動機制に関わる因果的説明の生成など、社会的現実の構成そのものを規定する過程でもある。今回はさらに、関係主義哲学や身体論的比較社会学の知見をも援用することにより、社会的現実に関する具象レベルと抽象レベルとの区分や、主体的個人という現代社会特有の人間像の形成過程等々を、概念的に整理することができた。これらの知見により、ボランティア体験者の手記という素材からは、具象的な行為に関わる記述と、それを規定する理念としての公共性概念を峻別し、同時にその相互規定性を抽出することができる。同時に、公共的理念を、個々人がその属性に応じてどの程度内面化しているかについても検討を加えることができる。継続して収集してきた個々のボランティア体験者の手記に対して、さらに分析を適用すると同時に、新聞記事をはじめとする、社会の側に定位した言説に対しても、これを補完する同様の分析枠組みを確立することが、次年度に向けての課題である。
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