Research Abstract |
ネットニュースを題材として,携帯電話に関する議論の推移について分析を行った.記事の量的推移を検討した結果は以下の通りである.(1)携帯電話関連記事数は携帯電話の普及に伴って1994年以降急速に増加,1997年に急増してピークを迎えた後減少に転じていた,(2)1997年のピークは迷惑をめぐって白熱した議論が展開されたためであり,携帯電話に関する一般的記事は漸増傾向にあった.(3)携帯電話の迷惑に関しては,1995年12月,1996年8〜9月,1997年4〜12月,1998年5〜6月,1999年5月,同年6月にまとまった議論(スレッド)が展開されており,1997年のスレッドは,期間,記事量,投稿者数すべてにおいて最大であった. 携帯電話の迷惑に関連するこれらのスレッドについて,論調の変遷を検討した.結果は以下の通りであった.(1)1995年の議論は,音(着信音,会話音声)にまつわる迷惑を指摘する記事のみであり,マナーによる対処が話題とされていた.(2)1996〜1998年には,語りの中心は携帯電話の電磁波がペースメーカーに及ぼす危険性に移り,使用禁止の是非が議論された.(3)1999年には,電磁波の危険性の議論はほとんどなくなり,音のもたらす迷惑が再び話題の中心となっていた.しかし,対処としてはマナーと禁止が同程度に話題とされていた. 興味深いのは,1997年のピーク時に主要な論点となった電磁波問題がその後ほとんど語られなくなったことである.これは,電磁波問題が,新奇な事物を社会から排斥するための方略として用いられた可能性を示唆している.現在,この点を裏付けるために,これらのスレッドから時期ごとにランダムに記事を抽出し,(1)迷惑さ・問題性の認識,(2)問題性の根拠,(3)対処主体,(4)対処コスト負担者,などについての詳細な内容分析を続けている.
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