1999 Fiscal Year Annual Research Report
エスニック・アイデンティティと宗教生活との関連性をめぐる調査研究 〜ブラジル日系「出稼ぎ」労働者を中心に〜
Project/Area Number |
11710113
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
紀 葉子 東洋大学, 社会学部, 助教授 (40246781)
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Keywords | エスニック・アイデンティティ / ブラジル日系人 / 宗教生活 / 出稼ぎ / ブルデュー / 社会分析 / 浜松市 / 浜北市 |
Research Abstract |
ブラジルからの出稼ぎ労働者の集住地域である静岡県浜松市および浜北市をフィールドとして、2000年度に、フランス社会学を代表するピエール・ブルデュー(Bourdieu,P.)が『世界の悲惨』("La misere du monde",93)で実践している「社会分析(socio-analyse)」の方法を用いた調査をするための下地作りに取り組んだ。 「よい『社会分析』と云うものは、調査対象者が置かれている観察可能なことは全て知り尽くした上で展開するもの」(ブルデュー著、拙訳、『東洋大学社会学部紀要、第37号-1号、1999年、85頁)であることを念頭に客観的なデータの蓄積、整理に努めた。1994年度に行ったブラジルの日系コロニアにおける現地調査を比較資料とするべくデータ化すると同時に、浜松市および浜北市の市役所に日系ブラジル人に関して収集されている客観的な情報の提供を依頼した。また、人材斡旋業者の協力を受け、出稼ぎ労働者を継続的に雇用している工場での調査紙を用いての量的調査を行った。さらに、積極的な調査協力者に対する聞き取り調査の過程で、浜北市をはじめとする集住地区に日系ブラジル人が積極的に通うプロテスタント系のキリスト教教会が作られ、活動が展開されていることを知り、実際に教会に足を運んだ。2世、3世のなかには子供のころからブラジルで親しんだキリスト教へのコミットメントが深いものが少なくないとの知見を得た。ブラジル人としてのアイデンティティをキリスト教教会との関わりのなかに見てゆく作業を、新たに研究計画に加える必要があると考えるに至った。 サンパウロ人文科学研究所宮尾進所長、脇坂勝則主任研究員を中心にしたサンパウロ在の日系ブラジル人の研究者による仮説検証のレビューを踏まえ、「社会分析」の実践を可能ならしめるためにも、2000年度に向けて、客観的なデータのさらなる整理と深い理解が必要であると考える。
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