1999 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の米国における知的障害者の試行的コミュニティ生活とその失敗 〜一般市民と同等の権利を有する自立的社会生活への挑戦〜
Project/Area Number |
11710133
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
米田 宏樹 茨城大学, 教育学部, 講師 (50292462)
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Keywords | 知的障害 / 地域生活 / 施設 / ノーマライゼーション / 米国 |
Research Abstract |
本年度は研究の初年度として,資料の収集に力を入れるとともに,20世紀初頭に設立されたマサチューセッツ州立レンサム「精神薄弱」者施設の設立・展開過程の分析を試みた。 この施設は,20世紀初頭の「精神薄弱」者「総収容化」政策破綻と政策の転換期に設立さた施設で,全米でいち早く仮退所による「精神薄弱」者のコミュニティ・ケアを施設の正式な機能として実施した施設でもある。レンサム施設がいかなる経緯でコミュニティ・ケアという新しい役割を構築し,その施設機能を拡大したのかを,州議会との関係を中心に検討した。 その結果,教育・訓練機能を内包する保護収容施設を構想する施設当局と「精神薄弱」者の「総収容化」を目指して収容力の拡充に意識を向ける州議会との施設役割に対する認識の違いのために,施設収容力の増強が限界に達したとき,レンサム施設は,収容力以外の施設の効用を主張し,施設の存在意義を測る別の基準を形作る必要に直面した。そして,その新たな価値基準が,施設での訓練成果であり,その象徴が「精神薄弱」者のコミュニティヘの復帰であった。また,施設がこの新たな基準へ目を向けることになった理由として,(1)施設がその開設当初に想定した入所者像に対して,実際の入所者は,「精神薄弱の程度」がより軽度であり,教育による改善と社会復帰への可能性が高かった。(2)「非行性・犯罪性を有する精神薄弱者」の施設への混入を防ぐために「従来の精神薄弱者」への施設処遇の効果を協調する必要があった,(3)施設が,公立学校入学・在学者の判別・判定の役割を担うことで,コミュニティ(施設外)に存在し,生活する「精神薄弱」者の存在とその可能性を認めざるを得なかった,ことなどが仮説として考えられた。 次年度はこれらの仮説を検証するとともに,検討を他の東部諸州にまで広げる。
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