1999 Fiscal Year Annual Research Report
地域と学校の連携に関する史的研究〜昭和恐慌下における学校の社会的位相〜
Project/Area Number |
11710151
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
背戸 博史 琉球大学, 生涯学習教育研究センター, 講師 (50305215)
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Keywords | 近代日本 / 近代学校 / 学校の社会的位相 / 地域構造 |
Research Abstract |
本研究は、昭和恐慌を画期とした、学校の社会的を明らかにすることを目的としている。これまでの成果を結論的に言うならば、第一次大戦後において興隆した個人化された大衆社会は、再び伝統的な共同体を志向し、国家もまた恐慌下統治政策として、民衆を再度「地域」に眠り込ませる政策を展開する。その際、地域再編の論理を旧来型の「名望家支配」から、「中堅人物」の育成へとシフトしながら、その実質を担保するため、学校の地域化、或いは、地域の学校化を推進してゆくことになった。 その具体的展開は、農山漁村経済更正運動によってなされた。この農山漁村経済更正運動下における地域と学校の連携は、次の二つの側面から推進された。一つは、社会教育の徹底(教化団体の指導・育成)による地域の教育化、或いは地域の学校化と呼ぶべき側面である。他方は、学校教育における郷土教育の導入や実業補修学校の整備・強化による、教育・学校の地域化、或いは生活化である。 昭和戦前期における学校と地域の連携は、ある側面において現在なお一つの「理想」とされ、戦後の「コミュニティづくり運動」(自治省)を経て、いま、生涯学習体系の整備過程において再志向されていると言える。我が国においては、人心の乱れや不安定な社会状況を乗り切る際には、必ずと言って良いほど「地域」が着目され、課題の解消のために、「地域」が内包する伝統主義的矯正力、或いは伝統主義的拘束力を学校との連携によって教育化するという方法に依存すると言わざるを得ない。 今後は以上の成果を踏まえ、地方文書等を史・資料としながら、昭和戦前期の学校と地域の連携が、「批判」のための思想的土壌を欠落させ、全体主義を補完した歴史経験について考究してゆきたい。
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