1999 Fiscal Year Annual Research Report
明治末・大正期の北海道における中等教育拡充政策とその性格に関する研究
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11710158
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
大谷 奨 摂南大学, 国際言語文化学部, 助教授 (70223857)
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Keywords | 教育史 / 教育制度 / 中等教育 / 教育政策 / 北海道 / 中学校(旧制) / 高等女学校 / 実業学校 |
Research Abstract |
本研究は、北海道内における旧制中等学校のうち、市区町(組合)立(以下、地方立)として発足した学校の多くが、漸次北海道庁立へと移管していく傾向にあることに注目し、その移管の経緯を確認することで、地域住民の庁立志向の由来および道庁の中等教育政策の性格を考察し、同時に、公教育制度整備のあり方を探ろうとするものである。 本年度においては、主に資料の検索、収集、整理作業に労力を傾けた。すなわち、旧制中等学校を母胎とする道内高等学校沿革史を収集して、庁立移管の有無とその経緯について整理するとともに、道議会事務局資料室において、大正期のすべての北海道会(以下、道会)議事筆記録(および参事会議事録)のうち中等学校に関する論議の部分をピックアップし、その複写をと整理を行った。 収集資料の本格的な分析は、翌年の課題となるが、現時点において確認できた事実は以下の2点である。(1)地方立学校の道への移管に際しては、道庁及び道会はその施設や教職員の資質について、高い基準を設定しており、移管希望の中等学校が数年をかけてこの条件をクリアしている事例が散見される。したがって、する道庁が移管方式を単純に、中等学校拡充の安価な手段として考えてはいなかったようである。(2)しかしその一方で、移管に際して甲種実業学校を乙種に降格する事例があった。これは実業学校の進学機能を断つことを意味しており、進学熱を冷却し、実業教育を重視する道庁の基本姿勢を端的に示している。 したがって、翌年の課題は、上記事実の本格的な解明とさらなる事例の析出、および資料収集の範囲を各学校レベルにまで拡大し、具体的な移管運動の実態解明を行い、地域住民の強い道庁志向のメンタリティを考察することである。
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