1999 Fiscal Year Annual Research Report
戦国〜近世前期在地社会における神道裁許状受容の研究
Project/Area Number |
11710193
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Research Institution | Osaka Municipal Museum of Art |
Principal Investigator |
井上 智勝 大阪市立博物館, 学芸課, 学芸員 (10300972)
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Keywords | 吉田家 / 吉田神道 / 神道裁許状 / 諸社祢宜神主法度 / 神職 |
Research Abstract |
研究課題について、平成11年度は『兼右卿記』『兼見卿記』『御広間雑記』など、研究の基礎となる吉田家側の資料の複製による収集を進めた。平成11年度中の終了を予定していたこれらの資料の分析等は現在も継続中であるが、精査対象地域の選定作業などは一定程度進展している。 平成11年度は吉田家の神道裁許状を受容する側の論理、あるいはそれに対する抵抗を理解するため、戦国〜近世前期における吉田神道の論理とは異質の宗教秩序を抽出することに努めた。この作業は、精査対象地域を選定する作業の一環でもある。修験道の力が強く、慶長期に神職と修験が衝突し、近世を通じて佐久郡などを除く地域で修験が優勢だった信濃国、永禄元年吉田家に大権現号を所望し、吉田兼右が大明神号の方が格上であると諷陳した若宮大明神の所在する日向国、および日向と強い文化的結びつきを持つ薩隅両国などをその対象とした。信濃国では「諸社祢宜神主法度」以前の神道裁許状の存在を確認し得た。薩隅日では領主島津氏の影響から、諏訪信仰が強く、修験も力を持っていたことが理解できた。 また、吉田家とは異質な神職補任である「伊勢官」の参考資料として、上野国に残る天正期の伊勢御師発給文書を調査・写真撮影した。この過程で、上野国の在地神職に対して発給された文禄、寛永の神道裁許状を知ることもできた。これらは戦国〜近世初期の吉田家が在地神職等へ発給した文書を集成した萩原龍夫『中世祭祀組織の研究』にも未収録である。また、近世後期の白川家の門人組織の手法などの参照も行い、比較の要に備えた。
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