1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高嶋 航 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (10303900)
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Keywords | 土地・微税文書 / 魚鱗冊 / 賦役全書 / 実徴冊 |
Research Abstract |
清代、土地税は国家収入の大宗であった。一方、人民にとって土地は最も重要な財産であった。国家による徴税と人民による土地所有は密接に結びついた表裏一体の事象であり、両者を考察することで国家と人民の関係のありかたの一端が明らかになる。本研究は官・民双方が残した様々な土地・徴税文書を比較検討して、土地をめぐる両者の関係(それは治安維持とならんで両者の数少ない接点の一つであった)を解明する。対象とする土地・徴税文書は実徴冊(微税の基礎台帳)、魚鱗冊、賦役全書、契約書、土地所有権状、納税通知単などである。魚鱗冊の研究では、従来よく問題にされた精度(信頼度)の観点からではなく、むしろそれが存在することの政治的意味・役割に重点を置いた。徴税で最も重要なことは公平性である。正確である必要はないが、少なくとも徴税を遂行し得る程度、人民が不満を爆発させない程度に公平である(と感じさせる)必要があった。つまりここでいう政治的意味・役割とは国家が表面上、理論上の公平性を保ち、徴税の主体となることを正当化するに当たって土地・徴税文書がどのような意味・役割を持っていたのかということである。賦役全書の研究では県以上のレベルにおける文書の統一性を明らかにしたが、それはとりもなおさず清帝国の統一性、中央集権的構造の現われであった。逆に県以下のレベルでは不統一が目につく。現在執筆中の実徴冊及び微税機構についての論文はこの点に着目したものである。県の胥吏や微税請負人たちは文書の不統一、換言すれば情報の断絶を利用して利益を得、権力を行使した。国家はこれを排除しようとしつづけるが、彼ら抜きで微税は不可能であった。というのも国家は微税を可能にするだけの文書・情報を持っていなかったからである。この課題の解決は土地改革によって彼らの情報を無意味にすることで最終的に果たされたのである。
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Research Products
(1 results)