1999 Fiscal Year Annual Research Report
動物考古学による縄文時代の西日本地域の生業・社会構造の復元:前期を中心として
Project/Area Number |
11710211
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
内山 純蔵 富山大学, 人文学部, 講師 (40303200)
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Keywords | 縄文時代 / 貝塚 / 鳥浜貝塚 / 粟津湖底第3貝塚 / ニホンジカ / イノシシ / 捕獲季節 / 遺跡機能 |
Research Abstract |
本年度は、西日本の中でも保存状態の良い縄文時代の貝塚が多く分布する、日本海沿岸と琵琶湖周辺地域に焦点をあて、データ収集と分析を行った。対象となった遺跡は福井県三方町鳥浜貝塚(前期)と滋賀県大津市粟津湖底第3貝塚(中期前半)であり、これらの遺跡出土の大型哺乳類であるニホンジカとイノシシについて分析を行った。その手順は、(1)ニホンジカとイノシシの下顎歯の状態から猟期を推定し、(2)この2種の出土身体部位に現れた偏りを、現代アラスカの狩猟採集社会であるヌナミウト・エスキモーのカリブー猟の、捕獲から分配・消費過程において利用されたさまざまな場所で観察された廃棄骨のパターンと比較し、その相関関係を検討することで、対象となった2遺跡の縄文時代当時の遺跡機能を推定する、というものである。具体的な成果として、まず捕獲季節については、(1)鳥浜貝塚ではニホンジカは従来主張されていた冬ではなく夏から秋にかけて、一方でイノシシは冬を中心に狩猟されたこと、(2)粟津湖底第3貝塚では少なくともイノシシは1年を通じて捕獲されていたことが明らかとなった。また遺跡機能については、(1)鳥浜貝塚では夏から秋にかけては集落拠点として、冬は狩猟キャンプとして機能し、(2)粟津湖底第3貝塚では骨の保存状態を踏まえてなお検討の余地があること、が明らかとなっている。また、イノシシの下顎歯の検討からは、粟津湖底第3貝塚においてイノシシの家畜化が行われていた可能性が高いことも推定できた。以上から、西日本において有力な蛋白質資源である淡水魚類を軸として、夏季を中心として定住的生活が行われていたものの、その在りようは地域的・時期的に特徴を有していたことが想定できる。こうした成果の部分的な概要をそれぞれ雑誌論文として発表した。次年度は、これらを路まえて当時の遺跡パターンをさらに具体的に解き明かしていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Junzo Uchiyama: "Seasonality and Age Structure in an Archaeological Assemblage of Sika Deer (Ceruis nippon)"International Journal of Osteoarchaeology. 9. 209-218 (1999)
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[Publications] 内山 純蔵: "遺跡はどうのような「場」だったか?縄文人にとっての琵琶湖を考える"エコフロンティア. 4. 40-41 (1999)