1999 Fiscal Year Annual Research Report
祭祀建造物から読み解くポリネシアの文化景観〜クック諸島の事例を中心に〜
Project/Area Number |
11710218
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 徹 慶應義塾大学, 環境情報学部, 助手 (90306887)
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Keywords | ポリネシア / クック諸島 / ラロトンガ島 / マラエ / 祭祀遺跡 / コンテキスト考古学 / 文化景観 |
Research Abstract |
中央ポリネシア・クック諸島の島々は、西欧文明と接触して以来200年余りのあいだに固有の伝統文化を急速に失ってきた。それは、局所的な生態系の中で過去1000年以上にわたって、環境に対する島民の働きかけや意味づけを通して育まれてきたローカルな文化景観の消失を意味する。平成11年度の研究では、過去7回にわたる現地調査のデータをもとに、マラエと呼ばれる石造の祭祀建造物を分析の中心に据えて、特に南部クック諸島ラロトンガ島の文化景観復元を目指した。研究の経緯ならびに成果は、以下の通りである。 1,データ整理:これまでに確認された22基のマラエについて、画像資料(写真・図面)・形態上の諸特徴・立地(地形)・周辺の植生・関連する伝承を項目とするデーターベースを作成した。 2,分析:データベースにもとづきマラエの立地について分析をおこなったところ、以下のパターンが浮かび上がった。 (1)内陸山地から外洋にいたる河川流域ごとに、さまざまな場所に立地するマラエを指摘することができる。それゆえ、マラエの多様性を指摘するには、ラロトンガ全域から事例を探す必要はない。 (2)多様性のヴァリエーションが流域間に認められる。 3,考察:関連する民族誌的情報をコンテキストとすることによって、以下の結論が得られた。 (1)河川流域という空間は、自治的な性格を備えたタペレ(tapere)と呼ばれる社会的単位の占有空間と重なる。 (2)したがって、マラエの立地に込められた意味は、ラロトンガ先史社会を形成していた個々のタペレごとに解釈される必要がある。 (3)この視点にもとづいて、特定河川流域に発見された2基のマラエを分析したところ、特定のタペレ社会に認識されていた「山と海の相互補完的な関係性」が指摘できた。
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[Publications] 山口 徹: "山のマラエ・海のマラエ:東ポリネシア・クック諸島ラロトンガ島の祭祀遺跡"民族学研究. 64(2). 237-251 (1999)
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[Publications] 近森正,山口徹: "楽園のフィールドワーク"三田評論. 1016. 18-23 (1999)