1999 Fiscal Year Annual Research Report
古代象嵌技法の研究〜消し象嵌技法の復元実験的研究〜
Project/Area Number |
11710220
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
尾崎 誠 財団法人 元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (50224209)
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Keywords | 象嵌 / 消し象嵌 / 素環頭大刀 / アマルガム / 鍍金 / 復元実験 / 古墳時代 / 風吹山古墳 |
Research Abstract |
平成11年度研究実績として、素環頭大刀の形状から見る製作時期の検討、中性子ラジオグラフィによる調査、消し象嵌に関連する象嵌技法の調査ならびに復元実験を行った。 調査対象遺物は100cm以上で関が無く、内反り、環頭は共作り、環体は楕円形であるなどの弥生後期〜古墳時代前期の特徴を持ち、後漢代の資料との共通点も多く舶載品として考えられる。来年度では鉄分析による産地同定の調査も検討中である。 象嵌部分の水銀の残存状態を確認するため、京都大学原子炉実験所において中性子ラジオグラフィを実施したが、残存状態が良好でないため確認するには至らなかった。 象嵌技法については、研究当初は消し象嵌技法とは金もしくは銀をアマルガムにした状態で象嵌線に塗りこめ加熱、研磨することで象嵌を施す技術と考えていたが、調査を進めることで、銀象嵌に金鍍金を施す金銷しと呼ばれる技法も消し象嵌と呼ばれることが明らかになってきた。そこで、金工の専門家に依頼し復元実験を実施した。実験内容は、消し象嵌として調査対象遺物に施されていたと当初は考えていた金・銀合金のアマルガムによる象嵌、金もしくは銀アマルガムによる流し込み象嵌や線象嵌による銀象嵌に金鍍金あるいは金箔による表面処理を施した象嵌など13パターンの復元モデルを作成した。分析データ等は現在整理中のため、遺物との比較検討が出来ていない状態だが、12年度早々に第22回文化財保存修復学会においてその成果を発表する予定である。
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