1999 Fiscal Year Annual Research Report
特殊方言アクセントの音響的性質及び音調認知構造が音調変化に及ぼす影響
Project/Area Number |
11710224
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
亀田 裕見 文教大学, 文学部, 講師 (20286024)
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Keywords | 特殊アクセント / 南伊豆方言 / 音響分析 / ピッチ / 曖昧アクセント / ゆれ / 基本周波数 |
Research Abstract |
本研究の目的は、南伊豆方言に見られる特殊アクセントの音響学的な性質を明らかにし、これと話者における意識や音韻論的な型の弁別意識を照らし合わせて音調認識構造を探り、それとアクセント変化の関係を見出すことである。99年度の進行目標は、音響分析に必要な音声の調査と音響分析という基礎作業と、この結果をもとに次年度の実験的認知調査のための合成音声を作成することであった。 まず、収集調査と音響分析および聴覚による記述は、主たる対象地域である静岡県南伊豆町を方言を対象としてほぼ終了した。比較対照としての東京語の音声も終了した。そのほか特殊アクセントといわれる他地域の方言音声についてもサンプリング調査を行い、比較できるかどうか検討したが、結果が複雑になり、比較は東京語とのみ行っていくことにする。 音響分析は、3拍名詞の一部についてはすでに本研究以前に分析を行っていたが、2拍名詞についても同様に行い、高年層から若年層までのデータが整った。音響学的な特徴として、2拍名詞においても東京語より基本周波数の値に揺れが大きいことや、東京語のように「初頭の基本周波数の高さをどこで下回るか」がアクセントの弁別に必ずしも寄与していないものの、型ごとの傾向が存在し、位置だけでなく、基本周波数の上昇幅や下降幅も関与しているのではないかということがわかった。また、高年層から若年層に向かうにつれて、基本周波数の値の揺れが縮小する傾向があるが、それは即東京語と同様になるものではなく、当核方言独自の基本周波数パタンを形成していくようである。このような点がわかった一方、2拍名詞の「無核型」(平板型)と「語末核型」(小高型)においてだけは、基本周波数特徴の上で型を区別する差異がいまひとつ明確に見いだせず検討事項として残されている。 このために、本年度のもう一つの目標である実験的認知調査のための合成音声を作成はまだ進んでいない。2000年度はこの作業を急ぎ、認知実験調査を行いたい。
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