1999 Fiscal Year Annual Research Report
文書資料による南北朝・室町時代日本語書記体系の史的研究
Project/Area Number |
11710226
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
矢田 勉 白百合女子大学, 文学部, 講師 (20262058)
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Keywords | 南北朝・室町時代日本語書記 / 漢文体文書 / 仮名文書 |
Research Abstract |
本年度は、南北朝・室町時代文書の原本調査として、京都市高山寺・京都市随心院・京都府立総合資料館・奈良県五條市講御堂寺・仙台市博物館への調査旅行を行い、原本或いはそれに準ずる資料の調査・撮影等をした。また、仁和寺所蔵典籍文書・東大寺図書館所蔵東大寺未成巻文書・東京大学附属図書館所蔵資料について、約六〇〇〇枚分の撮影及び焼付を行った。その他、東京大学史料編纂所等、東京都所在の機関を中心として写真帖・影写本等により、東大寺文書・群馬県長楽寺文書・留守家文書・青方文書等の調査を行った。現在、それら収集した資料を書記上の特徴に注目して分類・整理し、南北朝・室町時代の日本語書記の特徴の記述を試みている。具体的には、仮名文書については仮名字体・踊字の用法・漢字の交用を中心に、漢文体文書については倒置記法・助詞表記・仮名の交用を中心に、両者に共通した点として宣命書の混入を中心に、まとめつつある。 その結果の一部として、目下、南北朝・室町時代漢文体文書の助詞表記の特徴と近世漢文体文書との相違、その間の変化原理についての調査・考察を、「漢文文書に於ける助詞の仮名表記の変遷-「仁」の消滅と「江」の出現を中心として-」(『鎌倉時代語研究』23輯、二〇〇〇年五月刊行予定)として発表予定である。また、仮名文書の書記については、本研究計画の成果を直接利用したものではないが、その予備研究の結果をもとに「『平仮名らしさ』の基準について-オの仮名を例として-」(『国語と国文学』76巻5号、一九九九年五月)を発表しており、その後、本年度の調査成果を元に更に深度を高めた検証を行っている。
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