2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710243
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Research Institution | Nagoya Bunri University |
Principal Investigator |
神谷 勝広 名古屋文理大学, 情報文化学部, 助教授 (40233952)
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Keywords | 浮世草子 / 浄瑠璃 |
Research Abstract |
近世文学について考察する方法としては、まず近世文学作品の成立に焦点を当てたものが考えられる。しかし、それと同等に重要なものに、近世文学がどう受容されていったのか、つまり受容に焦点を当てたものである。 今回の研究調査は、主に、明治二十一年刊『小説文範』を調査対象とする。同書には、浮世草子・浄瑠璃の名文句が抽出されている。これを分析することで、近世文学作品の受容史に大きな手がかりが得られると考えている。 平成11年度、浮世草子・読本に関する調査を中心に進め、八文字屋本の浮世草子・上田秋成の浮世草子についてほぼ目安が付いた。平成12年度は、前年度の調査を踏まえつつ、近松門左衛門の浄瑠璃についてもほぼ関連する箇所が確認できた。菅専助の浄瑠璃に関しては、索引などが無いため、半分程度に未だ留まっている。 また、平成12年度の調査では、1つ注目すべき文献が見出せた。名古屋市立蓬左文庫蔵「(仮題)山荘五人娘」は、江戸中期の写本であるが、八文字屋本の浮世草子五作品から、名文と思われる部分を抄出したものである。『小説文範』と近似した性質のものといえる。両者を比較することで、江戸中期と明治初期における名文に対する意識の相違を考察する契機となろう。現在、「(仮題)山荘五人娘」を翻刻している。
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