1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710244
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Research Institution | Mukogawa Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
加賀 元子 武庫川女子大学短期大学部, 国文学科, 講師 (50290408)
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Keywords | 中世文学 / 中世説話 / 中世和歌 / 寺院史 / 無住 / 南都 / 西大寺 / 法隆寺 |
Research Abstract |
平成11年度では、鎌倉期から南北朝期における南都寺院の文芸活動を主として調査した。南都寺院と深く関わる僧侶として無住の存在は見逃せない。彼の著作である『沙石集』『雑談集』には特に南都関連記事が多い。既に指摘されている箇所も含め、南都関連記事の洗い直しを行った。また、無住作の真偽が問われる作品に『妻鏡』がある。現存の本文は全て刊本で、詳細な奥書もなく、刊本を遡行する写本の存在確認が待たれていた。奈良市西大寺には、『妻鏡』の問題を解く写本『妻鏡』が蔵されており、その調査によって、本資料が現存刊本と異なる本文で、さらに、室町後期に書写された現存本でも最も古い本であることが確認できた。西大寺蔵写本『妻鏡』の考察を含め、『妻鏡』研究のみならず無住研究を進展させる重要な資料であることなどを明らかにしたものを発表した。 ところで、この西大寺蔵写本『妻鏡』に合綴された資料に、「『沙石集』裏書」集成とも呼ぶべきものがある。この資料と『沙石集』を比較した結果、略本系『沙石集』成立を解明するものであることが明らかになった(この件については論文としてまとめ現在投稿中〈『国語と国文学』誌〉)。さらに、詳しい検討を行うため、略本系『沙石集』である、神宮文庫本蔵写本『沙石集』、東京大学国語研究室蔵写本『沙石集』、同蔵古活字本『沙石集』の閲覧、また、京都大学附属図書館蔵長享本,岩瀬文庫本、五帖本(吉川本)の複写資料による本文調査を行った。これら略本系『沙石集』からは裏書が本文化していく様相が伺え、今後の研究課題としたい。
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