1999 Fiscal Year Annual Research Report
文文法と談話解釈の接点としての文主題の形式意味論的研究
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11710261
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河村 道彦 静岡大学, 教育学部, 助教授 (00283325)
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Keywords | 文主題 / 情報構造 / 意味論 / 日本語 / 英語 |
Research Abstract |
本研究は、日本語や英語の典型的な主題表示の形式のもつ意味論・語用論を考察し、両者の比較を通じて(1)主題はどのように標示されるのか、(2)主題の標示は文脈にどのような変化をもたらすのか、という2つの問題に通言語学的な観点から取り組むものである.本年度は、日本語の「は」表す「主題」と「対比」を中心に分析をすすめ、その意味論を「構造化された意味(structured meanings)」の枠組みにより特徴づけた.その過程でえられた知見には次のようなものがある. 1.「は」の表す「主題」と「対比」は独立した2つの解釈であり、一方から他方を派生させたり両者を段階的範疇と仮定するような分析には問題がある.「は」の解釈には「主題」、「対比」、「主題+対比」の3通りの可能性があり、「主題」の解釈には文法関係や統語位置など文文法による制約が大きい.一方、「対比」の解釈は基本的に強勢や文脈など外的な要因を必要とするが、「主題」の解釈が不可能な場合にはグライスの法則に基づき文脈の修復が試みられる. 2.従来の分析における記述的一般化の多くは、文脈から切り離された文の容認可能性に基づくものであり言語事実を正確には反映していない.質疑応答など言語的・非言語的文脈を付加した例文の解釈をもとに「は」の解釈とその言語的具現化を考察した結果、(1)主題の「は」は命題外の文内演算子と結合し発話行為のレベルにおける代替値間の対立を表す、(2)対比の「は」は命題の内部に現れ命題を表す事実レベルでの対立を表すという分析が得られた. 3.英語のBアクセントは、本研究でいうところの「対比」または「主題+対比」を表す.したがって、英語のBアクセントの意味論をそのまま日本語の「主題」の分析にあてはめることはできない.英語における「主題」の解釈は通常、特定の環境における規定値として得られるものと考えられるが、その詳細については分からないことも多く、その理解には通言語的な分析を通じた主題の意味論の構築が必要とされる.
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Research Products
(1 results)