1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710264
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
永富 久美 東京都立大学, 人文学部・英文科, 講師 (60305399)
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Keywords | ヴィクトリア朝小説 / 結婚法 |
Research Abstract |
当研究では、従来の文学史において正典とされてきたヴィクトリア朝小説と、文学史から排除されてきた非正典の小説を取り上げ、それらのテクストを、従兄弟と従姉妹の結婚の問題と、配偶者が死亡した場合の夫と妻の選択肢をめぐる法的規制という文化的コンテクストとの関係において分析することにより、正典形成にまつわるイデオロギーを探り当てることを目指している。従って、小説の分析に着手する前段階として、結婚法ならびにそれをめぐる文化全般にわたる一次資料の情報が必要である。本年度は申請書に記載した研究計画に基づき、まずそれらの一次資料の収集及び読解分析に焦点を合わせた。東京大学でのマイクロ資料調査や、さらに京都大学での雑誌資料調査(科研費による出張…平成12年3月6日〜7日)など、国内での収穫もさることながら、夏期休暇を利用したイギリスのブリティッシュ・ライブラリーでの調査では(科研費による出張…平成11年8月4日〜17日)、亡き妻の姉妹との結婚を禁じる法律の改正を求める議論に関して、これまで入手できていなかった1840〜50年代の貴重な資料を多数得ることができた。その結果、当初は分析対象としていなかったヴィクトリア朝初期の小説を研究対象に加えることが可能になり、それらの小説の読解に目下着手したところである。以上のような準備手続きが必要であったために、本年度は論文の形にまとめあげるところまでには達していないが、当研究の成果は、今年9月にサセックス大学において発表する予定である。
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