1999 Fiscal Year Annual Research Report
英語における文主語の韻律・情報構造及び談話上の能格性の実証的研究
Project/Area Number |
11710266
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
熊谷 吉治 愛知県立大学, 文学部, 講師 (20242745)
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Keywords | 談話 / 能格性 / 情報構造 / 項構造 / トピック / フォーカス / 語用論 / 韻律論 |
Research Abstract |
今年度は、Chafe(1980)に収録されている談話資料の分析を行った。これは、短編の無声映画を被験者に見せた後、内容を自発的に語ってもらったもので、合計5人分の英語話者の言語資料についてその情報構造(文のどの位置に「新しい」情報もしくは「古い」情報を担った指示物が来るか)を数値化した。その成果はKumagai(2000)に公表した。また、12年度に口頭発表を行う予定である。この研究でわかったことは、情報の新旧という観点で英語の項構造を見つめた場合、自動詞主語と他動詞目的語が似た振る舞いをし、他動詞主語と対立するということである。従来、格付与について指摘されている「能格性」が、実は情報構造の面でも見いだされ、しかも格付与では「対格性」を示す英語ですら、談話の中では能格性がはっきりと現れたのである。 先行研究として、文法的能格言語であるSacapultecを分析したDu Bois(1987)があり、本研究はその研究結果と比較対照が可能になるよう、同じタスクに基づいた言語資料を分析し、分析方法も矛盾のないように努めたものである。従って本研究の成果は、能格言語も対格言語も談話上の能格性を示すことを説得的に示したものといえる。研究の過程でDu Bois教授ご本人とも電子メールを通じて私信を交わしたが、英語に関しては本研究のような調査はまだ誰も行っていないことが確認された。来年度はデータの解釈を更に進め、一般的な概念としての「能格性」の持つ理論的意味合いを探り、本年度同様に論文でその成果を公表するつもりである。
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