1999 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学とジャ-ナリズム:新聞・雑誌が文学市場に果たした役割
Project/Area Number |
11710267
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福田 敬子 青山学院大学, 文学部, 講師 (80276005)
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Keywords | 19世紀英米文学 / ジャ-ナリズム / イエロ-・ジャ-ナリズム / メディア / 女性ジャ-ナリスト / 女性解放運動 / 海外旅行ブ-ム / 旅行記 |
Research Abstract |
19世紀末の文学作品にはジャーナリズムの動向をモチーフにしたものや、女性新聞記者が登場するものが目立つことから、19世紀のジャーナリズムと女性の関係に着目し、まず、書く側の女性と読む側の女性の比較という観点から調査に着手した。その結果、書く側としては、この時代、女性ジャーナリストが多数、新聞雑誌界に進出し始めていたことがわかる。彼女たちは、男性とは違った視点で記事を書いて社会の不正を告発したり、弱者を救済するという理想をかかげていたが、結局は「イエロー・ジャーナリズム」の風潮に取り込まれ、「話題作り」に利用され、必ずしも思いどおりに活躍できなかったことがわかる。一方、読者としての女性は、新聞雑誌を読んで刺激を受け、行動を起こすようになる。特に、女性記者が書いた記事や特派員報告に共感を覚え、彼女たちに倣って旅に出たり、社会活動に参加するようになってくる。逆に、保守的な記事に動かされて女性の領域は家庭だと再認識する読者もいた。このように、新聞雑誌というメディアの発達は、良くも悪くも女性の生き方に大きな影響を与えたのであって、だからこそ、作家はそうしたメディアに翻弄される女性たちに着目して(また、そうしたテーマがこの時代の読者に受けることを意識して)作品に登場させたのだということがわかった。 今年度収集した資料は、女性ジャーナリスト関連の資料(伝記、旅行記、彼女たちが執筆した新聞雑誌記事)のほか、19世紀末〜1950年代の女性誌、19世紀末から新聞に多用されるようになった挿絵や漫画が中心である。 来年度は、今年度の調査を継続しつつ、ジャーナリズム関係の資料を充実させ、新聞雑誌がどのように読者の好みを操作し、作家に読者の存在をどのように意識させたか、また、作家の「書く」という営みにどのような影響を与えたのかを具体的に論じられるところまで、研究を発展させたいと考えている。
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Research Products
(2 results)