1999 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス期「パンフレ文学」に於ける悪魔化・魔女化の問題-文学の政治性を巡って-
Project/Area Number |
11710273
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
平野 隆文 青山学院大学, 文学部, 助教授 (00286220)
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Keywords | 魔女 / 悪魔 / パンフレ / ルネサンス / フランス / 闇の表象 / 論争 / 魔女学 |
Research Abstract |
本年度は様々な文献の充実をはかると同時に、一次的文献の読解作業にも取り掛かった。その成果の一部を論文の形で発表している。「16世紀のモンテスキュ-」と呼ばれたジャン・ボダンが、主にドイツ語圏で活躍した同時代人の医者ヨ-ハン・ヴァイヤ-を標的にした「論駁文」に先ず着目した。ボダンの『魔女の悪魔狂』とヴァイヤ-の『魔女論』の双方とに照らし合わせながら、ボダンの「論駁文」というテクストの特性を探っていった。その結果、これは単なる反駁のために記されたものではなく、ヴァイヤ-を正真正銘の魔女として告発する「告発文」であること、従って厳密に司法的な枠組みの中で記されていることが明らかとなったのである。この研究に対しては、1999年10月に東京大学大学院人文社会系研究科より博士の学位を授けられている。また、ヴァイヤ-のテクストの特殊性についても、『青山フランス文学論集』に寄せた論文「ヨ-ハン・ヴァイヤ-:魔女学の論理から文学へ」の中で詳しく論じ、このテクストが、他のパンフレ的テクストとは大いに異なり、「物語的側面」を色濃く有している点を明らかにしている。また、「パンフレ的」文学の代表作であるアグリッパ・ド-ビニエの『悲壮曲』の分析を行い、これに関する論文を準備しているところである。さらに、カトリック、プロテスタント双方の「パンフレ文学」のテクストを少しずつ入手し、そこに見られる敵の「魔女視」の問題という観点から分析を進めているところである。これらについては、来年度に研究成果を公表したい。
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