1999 Fiscal Year Annual Research Report
ゲルトルート・コルマルにおける「身体=テキスト構造」
Project/Area Number |
11710275
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大内 庸子 名古屋大学, 言語文化部, 助教授 (00273201)
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Keywords | ゲルトルート・コルマル / ドイツ抒情詩 / 舞踊 / 身体 |
Research Abstract |
本年度の第一課題である「テキストの分析による『身体=テキスト構造』に関しては、詩「変身」、「放浪の女」、「女流詩人」、「踊り子II」、「蛇の歌」などを題材に分析を行った。まずコルマルの詩世界では、(1)身体=現実世界と、布=テキストの世界が同等の重要性を持っており、両者の間には間断のない弁証法的な運動が認められること、(2)それゆえ、コルマルの作品には、布を纏った身体の運動が、様々なヴァリエーションで認められることが明らかになった。(3)また、コルマルの作品に頻出する「語る/動く肖像」の概念(「紋章」・「写真」・「活人画」・「彫刻」などを含む)が、現実世界=語り・動きと、肖像=テキストとの葛藤を表象すること、(4)それがギリシア彫刻などをモデルに動く肖像や彫像を演出した、同時代の舞踊芸術と深くかかわりを持つ事が明らかになった。(5)さらに、フェミニズム的な観点から考えれば、身体とテキストの密接な関連性は、伝統的に主体性を拒絶されてきた女性が、本来客体である自己の身体をテキストに選ぶ、というモデルネにおける女性詩人の位置の問題と結びついている。 本年度の第二課題である同時代舞踊との関連については、上記(4)の問題のほかに、(6)コルマルが姪宛ての手紙の中で創作している『雪の精の踊り』は、アンナ・パヴロワが、『白鳥の湖』と『くるみ割り人形』の音楽を使って踊った『雪の精の踊り』をヒントにしているらしいことが明らかになった。しかし、本来予定していたシャルロッテ・バラとルーシー・キーゼルハウゼンの舞踊との関連については、分析を行うことができなかった。なお、以上の研究を、博士論文『ラスカー=シューラー、コルマル、ザックスにおける舞踊モデル』の第4章としてまとめ、現在、東京大学大学院人文社会系研究科において予備審査中である。
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