1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11710277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入山 淳子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (00272435)
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Keywords | Videha / Janaka / Mahabharata / Mithila / Uttarajjhayana / Mahajanakajataka / Dhammapada / Udanavarga |
Research Abstract |
複数モチーフの合成であるNimijatakaは、「インドラ神とヴィデーハ国王との問答」から物語が始まる。本年は、種々に伝わる両者の問答伝説中の一詩節として夙に知られてきた、都ミティラーの火事に纏わる詩節の伝承過程と、その本来あったはずの文脈について明らかにした。 この詩節は一般に出家した王の名言として理解され、従来の研究もそれを前提に論じるものであった。しかし、今回、これまで取り上げられることの稀であった、Mahabharata(Critical Edition)のAppendix収録の伝本を中心に、改めてこの詩節の伝承過程を辿った。 その結果まず、この詩節は出家後の王ではなく、在位中の王の名言であること、Appendix収録の伝承テキストは、この詩節を中心に内容が展開し、バラモン教文化における理想のクシャトリア像を映す、本来の伝説をよく伝えている現存唯一の資料であることを明らかにした。しかし一方で、サンスクリット語、パーリ語、プラークリット語、漢訳等、さまざまな言語による、バラモン教系、仏教やジャイナ教などの諸伝本の綿密な比較からは、問題の詩節そのものについては、本来のそれとは異なる語彙が含まれていることがわかり、復元を試みた。また、この詩節が出家者の安楽の境地を示す別の詩節と混成し、新たな詩節が生まれたこと、そして、それが後世には本来の詩節のテキストに取って代わり、本来の文脈からも又離れて、出家王の名言として理解されるようになったこと、そこには背景として、ミティラー諸王の出家の習わしがその変容を促進せしめたことを明らかにした。一方、出家優位の仏教とジャイナ教は、出家後の王とインドラとの問答という設定を利用し、それぞれの物語中の一場面としてこの詩節を取り入れたことを明らかにした。(9月刊行予定の追悼論集に投稿中)
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