1999 Fiscal Year Annual Research Report
1860〜1920年代の文学における日本女性像をめぐる図像と言説の比較文学的研究
Project/Area Number |
11710296
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平石 典子 三重大学, 人文学部, 助教授 (20293764)
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Keywords | 世紀末文学 / 明治文学 / 「新しい男」 / 「新しい女」 / 女性同性愛 / 女学生 |
Research Abstract |
平成11年度においては、(1)「捻れたヒロイン」の二重構造、(2)女性たちの言説、の2つのテーマを追った。 (1)のテーマでは、西洋文学の圧倒的な影響の下にあった日本近代の男性作家たちが、植民地主義的な図式から逃れられずに男性でありしかも東洋人であるというジレンマを抱え続けた結果生み出すこととなったヒロイン像についての調査を試みた。当時の文学作品、新聞や雑誌の記事の分析からは、西洋への憧れと自らのコンプレックスが、西洋的な容姿や性質の日本女性を高く評価するという態度となってあらわれ、それが「女学生」という存在に投影される、という図式が見えてきた。その成果は、現在執筆中の博士学位論文の第2章「翻案された女たち」(原稿用紙170枚相当)という形となった。 (2)のテーマでは、このような新しいヒロイン像の隆盛が実際の女性たちの言説にどのように関わっていったかを検証した。明治後期になると、文学作品だけでなく、雑誌への投稿などという形をとった女性たちのエクリチュールは激増する。そうした言説を雑誌などから収集、分析しながら、その中心的な存在として取り上げたのが、田村俊子である。彼女の著作の分析や、当時の彼女の文壇における評価を辿ってみると、彼女は、当時の「新しい女」を巡るさまざまな言説を、上手に自分の中に取り込んで、利用していっていることがわかった。こうして明らかになった点の一端をまとめたものが「「新しい女」からの発信-『あきらめ』再読」である。なお、この論文で考察した、田村俊子における女性同性愛の意味、という論点は、本研究に新しい視野をもたらすこととなった。この視野の広がりは、平成十一年十一月に行われた日本比較文学会第八回中部支部大会シンポジウム「「男色」を読み解く」という成果を生んでいる。
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Research Products
(1 results)