1999 Fiscal Year Annual Research Report
初期アメリカにおける訴答制度の変容と陪審の機能変化とに関する法制史研究
Project/Area Number |
11720002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 孝 東北大学, 法学部, 助教授 (10241506)
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Keywords | アメリカ法 / 陪審制 / ジョン・アダムズ / ボストン虐殺事件 / マサチューセッツ / 法曹一元 / 訴答 / プリーディング |
Research Abstract |
今年度は、当初の計画の通り、初期アメリカにおける訴答体系簡略化の過程及び理由、並びに現実の陪審裁判において用いられる訴答の種類と陪審による評決との関係に関する史料を収集・整理し、それに基づく実証的分析に注力した。その要点は以下の通りである。ジョン・アダムズの1771年2月12日付「日記」中の言明は、当時の陪審が広く法律問題についても判断権を行使し、したがって陪審が当時「法決定権」を持っていたという、後の学説の根拠であるが、この言明の歴史的・法制史的文脈を詳細に検討した。その結果、第一に、件の言明で展開された主張が、当時弁護士であったアダムズの仕事を成功に導く目的でなされた、極めて具体的な利害に関わる部分が大きいことが判明した。第二に、陪審の「法決定権」に関わる法制度、すなわち(a)争点決定の方法及び内容、特に訴答の仕方、(b)陪審に対する説示の内容及び方法、(c)陪審が行う評決の方法、(d)説示と異なる評決が提出された場合に問題とされうる法的措置特に再陪審事由、の四点が、いずれもイングランド法の高度な体系を十分摂取したものとなっておらず、特殊アメリカ的に歪な形での受容及び運用が施されていることと、陪審の「法決定権」とが、表裏一体の関係であったことが看取できた。この成果は、近々中間報告的な論文、「独立前夜マサチューセッツにおける陪審裁判の一側面-1771年2月12日付ジョン・アダムズの「日記」をめぐって-」としてまとめられる。 今後は、研究の対象年代をアメリカ独立後に移すが、頭書の観点を追究する際、そこにおける「法曹一元」類似の態勢にある新しい時代のアメリカ法曹が、上記陪審の「法決定権」をいかに扱うかが、今後のアメリカ法制史全体の理解にとっても重要なポイントになるものと思われる。
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Research Products
(1 results)