1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11720015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 肇志 東京大学, 社会科学研究所, 助手 (90292747)
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Keywords | 自衛権 / Caroline号事件 / 不戦条約 / 国連憲章 |
Research Abstract |
平成11年度は、まず、第一次世界大戦前の自衛権概念に関し、「Caroline号事件」及び当時の学説の概括(これらについては「社会科学研究」第50巻第6号(1999年3月)において前倒しで公表した。)を踏まえた上で、同事件以外の諸事例(米墨国境諸事件、Virginius号事件、ベーリング海オットセイ保護権事件)の分析を進めた。こうした多数の事例を分析することによって、以下のように同概念を立体的に明らかにすることができた。 すなわち、「第一次大戦前の自衛権」は、自国に対する侵害があり、領域国あるいは旗国による抑止が期待できない場合に、相手国領域に侵入しあるいは公海上で、自らに対する侵害を排除することを正当化する根拠として認められていたのであり、領域侵害あるいは公海自由の侵害の正当化をその本質的機能としていたのである。それは領域尊重原則あるいは公海自由原則の文脈に関わっており、武力行使の文脈に関わる「戦間期の自衛権」概念とは、問題の本質を異にしていたのである。 その後は、「戦間期の自衛権」概念の分析を進めている。具体的には、国際連盟規約、ギリシャ=ブルガリア国境紛争事件、ジュネーブ議定書、ロカルノ諸条約、不戦条約、「在外自国民保護」に関する諸事例、等を検討し、同概念に関して一応の素描を得た。さらに、本研究の全体像を仮にであれ提示するために、ニュルンベルグ及び極東国際軍事裁判、並びに、国連憲章制定過程における自衛権概念の扱いを検討している。 平成12年度には、戦間期以降の分析を深めていくことが課題である。
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