1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11720017
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒神 直純 岡山大学, 法学部, 助教授 (80294396)
|
Keywords | 国際法 / 国際機構 / 国際公務員 |
Research Abstract |
国際公務員の身分保障につき、国際労働機関行政裁判所の判例を収集・整理する作業と併行して、今日最も代表的な国際機構である国連に設けられた行政裁判所の判例の最近の動向をフォローした。 国連行政裁判所の最近の判例を紐解く過程で、国際公務員の法的地位を考える上で重要な問題点である「国際的職員」としての地位-任務遂行に当たっていかなる政府からも指示を求めたり受けたりしてはならないという地位-を深く掘り下げて検討しておくことが喫緊の課題であると判断した。そこで、国連において長く実施されてきた「派遣(secondment)」という慣行に着目した。国際機構に派遣された一国の公務員は、二つの忠誠-国際機構への忠誠と自国政府への忠誠-の下に置かれることとなる。果たしてそのような慣行は国連憲章上認められるのか、また、それが認められるとしたらそのような制度はいかなる今日的意義を有するのか。 以上の課題を国連行政裁判所や国際司法裁判所の判断を中心に考察し、国連総会における最近の議論の動向を跡付ける形で検討した結果、派遺制度が国連憲章上限られた範囲ではあるが許容されていること、また、憲章上の問題となり得るのはむしろ当該制度自体ではなくその運用が問題であることが分かった。さらに、このような派遺制度が未だ必要とされているところに今日の国際機構の発展状況の一端を知ることもできた。 今年度は、主として以上の研究を中心に行い、その過程において、5月8日と10月30日には、関東・国際法政研究会/関西・国際問題研究会若手会および国際法研究会にてそれそれ研究報告を行った。また、研究成果として、「国連における派遣制度の今日的意義と問題点」と題する論文を『岡山大学法学会雑誌』第49巻第3・4号に発表する予定(すでに校正済み)である。
|