2000 Fiscal Year Annual Research Report
契約法における意思の内容および役割を再考し、その現状とあるべき姿をさぐる。
Project/Area Number |
11720029
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 早稲田大学, 法学部, 助教授 (40247200)
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Keywords | 契約自由 / 意思理論 / 内容規制 / 本質的債務 / 消費者契約 / 契約類型 / 性質決定 / コーズ |
Research Abstract |
1 フランス契約法研究 (1) 「フランス法における契約の本質的債務について」というタイトルで、2000年10月8日、日本私法学会において報告を行った。同じテーマについて、早稲田法学76巻1号(既刊)および私法63号(2001年3月刊行予定)に論文を執筆した(私法63号には仏文の要旨も掲載される)。 (2) 契約の本質的債務は、契約自由の外延を画する公序概念と異なり、契約自由の内在的限界を画する概念ではないかとの予測を抱いていたが、研究の結果、これに尽きない豊かな契約法理論への示唆が得られた。フランス法における契約の成立要件のひとつとされるコーズとの関わりも重要である。結論のみ示せば、以下のような内容となる。(1)契約には類型毎に有すべき内容がある。コーズによって契約類型が決まれば、当事者はその類型の契約の本質的債務を損なうことができない。(2)しかし、この考え方が契約自由と矛盾するわけではない。まず、当事者は本質的債務を損なわない限り、契約内容を修正することができる。さらに当事者は、別類型の契約を利用することも、新たな契約を創造することもできる。契約内容決定の自由はこうして担保される。(3)本質的債務が内容規制の基準になる法的な根拠は、意思が希薄であるからでも、交渉力が不足していることを補うためでもない。契約内容の不当性が、それだけで条項の効力否定を正当化する(本質的債務を欠けばもはやその類型の契約ではありえない)。(4)視野を広げると、目的(コーズ)とこれを達成する技術(契約条件の集合体)を対置する思考方法をみることもできる。契約条件が目的に適合的でなければ、目的に適合するように修正される(特定条項のみの効力否定)、と観察するわけである。(5)本質的債務論は、契約内容への介入権限が制約されているフランスの裁判官にさえ認められた契約内在的な規制原理であり、職業人間の契約において妥当することも確認しておこう。(6)さらに、手作り契約と典型的契約を対置する発想を見出したことも収穫のひとつである。 2 アメリカ契約法研究 契約法における同意理論と題されたランディ・バーネット教授の早稲田大学における講演を翻訳し、比較法学誌上に掲載ずべく原稿を提出した(2000年6月刊行予定)。 3 わが国の契約法研究 とりわけフランス契約法の研究をふまえ、わが国の不当条項規制の問題について、検討を加えた(論文として民商法雑誌123巻4=5号(2000年2月刊行予定)に掲載される)。
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[Publications] 小粥太郎: "フランス法における「契約の本質的債務」について(1)"早稲田法学. 76巻1号. 1-29 (2001)
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[Publications] 小粥太郎: "フランス法における契約の本質的債務について(2001年2月末現在、校了)"私法. 63号. 111-117 (2001)
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[Publications] 小粥太郎: "不当条項規制と公序良俗理論(2001年2月末現在、校了)"民商法雑誌. 123巻4=5号(未定). (2001)
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[Publications] バーネット(小粥太郎訳): "契約法における同意理論(2001年2月末現在、早大比較法研究所に原稿提出済み)"比較法学. 35巻1号(未定). (2001)