1999 Fiscal Year Annual Research Report
規制緩和による価格競争の激化と不当廉売規制のあり方について
Project/Area Number |
11720033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 寛子 北海道大学, 法学部, 助教授 (10301863)
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Keywords | 規制緩和 / 価格競争 / 不当廉売 / 略奪的価格設定 |
Research Abstract |
平成11年度においては、政府規制下にあった様々な事業分野における規制緩和にともない競争が導入され、独禁法違反被疑事件も発生し、不当廉売規制の重要性が認識された。そこで第一に、航空産業における新規参入事業者への対抗的価格設定に関し、公正取引委員会等へヒアリングを行うとともに、米国の航空産業に関し文献を中心に調査した。とりわけ、米国司法省によるAmerican Airlinesが略奪的価格設定を行ったとする提訴について検討した。加えて、日本でも2000年4月からの航空運賃自由化に伴い、多様な価格競争の展開が期待されるところであるが、発着枠等に関する他の規制により、新規参入者が撤退する可能性も否定できない。競争維持の観点からは、その他の規制との関連も考慮しつつ、単なる価格水準のみならず、市場構造等を検討する手法が必要と考え、違法性判断のあり方を検討している。第二に、電気事業における大口供給の小売が自由化されたが、通産省と公取委とが共同で公表した「適正な電力取引についての指針」にも見られるように、電力会社が新規参入者を排除する目的での不当廉売を行う可能性があり得るため、現在は電気事業法規制との関わりもあわせて、研究を進めている。航空・電気いずれにおいても、規制緩和後の市場で不当廉売が起こる場面は、主として既存の独占的事業者による新規参入者排除の場面と予測される。こうした問題点の抽出により、本年度の目的は概ね達成し得たといえる。しかし、その他の問題抽出も含め、より適切かつ厳密な違法性判断基準の策定に資するべく、法3条(私的独占)適用の可能性も視野に入れ、米国・EUとも比較しながら研究を進めている。10月には「不当廉売規制の展開と違法性判断基準」と題する論文を公表したが、そこには本研究の成果の一部が反映されている。また、北大法学部叢書からの出版準備を進めており、同書は、これらの研究成果を反映させるものとなる。
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Research Products
(1 results)