1999 Fiscal Year Annual Research Report
権利の自力救済に関する刑事法的考察ー現代的諸問題の解明を目標としてー
Project/Area Number |
11720040
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋爪 隆 神戸大学, 法学部, 助教授 (70251436)
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Keywords | 正当防衛 / 緊急避難 / 自救行為 / 違法性阻却 |
Research Abstract |
本年度は、刑事違法性論、とりわけ違法性阻却事由に関する概括的・理論的研究に従事した。とりわけ、緊急行為(正当防衛・緊急避難)を検討の中心としつつ、利益衝突状況が現実化する以前に、行為者に危険を回避する可能性があったことや、行為者自身が利益衝突状況を招いたことが、違法性阻却事由個々の解釈においていかなる意義を有するのかに関して検討を加えた。その結果、利益衝突状況が現実化する以前の利益状況は、正当防衛、緊急避難それぞれの個別的考察に馴染むものでなく、むしろ、両者に共通する視点から検討を加えるべき問題であると考えるに至った。すなわち、正当防衛、緊急避難には「緊急行為」としての共通項が認められるところ、自らの帰責性により、自己の利益を保護するために他人の利益を侵害することがおよそ容認できないような状況においては、この緊急行為性が否定され、その結果、正当防衛・緊急避難の成立可能性がともに全面的に排除されると考えるべきである。さらに、この研究をふまえ、正当防衛と緊急避難の相違点についても、さまざまな角度から検討を加えた。なお、この研究の過程においては、日本の学説・判例を網羅的に検討するのみならず、関連するドイツ法の学説・判例についても詳細な分析を加えることができた。 これらの研究とともに、自救行為の成立範囲、さらに競売入札妨害罪、強制執行妨害罪など、個人の実力行使の限界にかかわる犯罪類型の構成要件解釈についても検討を加えた。とりわけ競売入札妨害罪については、二件の最高裁判例の当否を中心として、その保護法益が「競争原理」であると結論づけるに至ったが、基礎理論的考察に多くの時間を費やしたこともあり、その研究はなお不十分であり、来年度以降、さらに継続的に検討を加える必要が残されている。
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Research Products
(1 results)