1999 Fiscal Year Annual Research Report
現代日韓関係における文化交流現象の拡大と文化交流政策の変化に関する研究
Project/Area Number |
11720045
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 夏生 富山大学, 人文学部, 講師 (20311673)
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Keywords | 日韓関係 / 文化交流 / 大衆文化 |
Research Abstract |
国内社会の対日感情のわだかまりを理由に日本との大衆文化交流を拒否しつづけてきた韓国政府は、金大中政権下の98年10月を境に日本大衆文化の「段階的開放」政策に転じ,その後も矢継ぎ早の実施を続け今に至っている。文化交流政策における韓国側のこうした変化について、本研究の今年度の調査では複数時点の世論調査結果を収集・検討した結果、これらの変化は現代韓国社会の対日感情の急速な改善を反映した結果としてよりも、世論に先行して政府部内から提示された政策的判断として理解するほうがより適切であることが明らかになった。そこで韓国の対日文化交流政策の決定過程について、各種報告書や新聞記事の収集、インタビューなどから精密に追跡したところ、現段階では「外交政策セクター」「文化政策セクター」と「大統領のリーダーシップ」が各々の政策目標を達成しようとして駆け引きを行うというモデルの説明能力が比較的高い、との知見を得た。このモデルを援用することで、特に金大中政権の成立当初には、日本に対しては「未来志向」の関係を標榜する大統領のリーダーシップが全面に押し出されながらも、実際には日韓漁業交渉や歴史認識問題等の懸案事項に対処するための「切り札」として大衆文化開放を位置づけようとする外交通商部と、大衆文化産品の正面開放によって海賊版の流通を阻止し、同時に国内文化産業の活性化や市場拡大を促そうとする文化観光部との間で見解の対立が存在していたという状況構造を、明確に把掘することができた。一方、開放政策の根拠としてたびたび指摘されながらこれまで実態の把握が十分になされていなかった「文化交流現象」、すなわち非公式的な文化流入の実態についても、開放政策を機に関連諸機関が行った各種調査報告を収集することで全体的な像が浮かび上がりつつあり、全体をより包括的な研究成果として来年度に発表しうるよう、更に準備を重ねている。
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