1999 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の開発体制の変動と市民社会-民主化過程の開発と分配をめぐる政治経済学
Project/Area Number |
11720056
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 韓国 / 開発体制 / 民主化 / 市民社会 / NGO |
Research Abstract |
権威主義体制下での「上からの開発」方式は徐々に経済合理性に合わなくなり、80年代末には「民主化」によって一般国民の意思を政策に反映する必要にも迫られた。が、政党は旧態依然として既得権を握る層を基盤とし、実際に国民経済の中心を担っているのは財閥の経済力であった。政党政治は「経済的不公正の是正」など市民社会の要求を反映する回路となりえず、NGOが政治圏の外から圧力をかける形で市民社会からの要求が提起された。その中で、どんな「改革政策」が実施されるかは、大統領と議会の関係、大統領が国民のどの層を支持基盤にしようとするのか、NGOがどう問題提起をして政策に影響を与えようとするのかに関連し、3者の関係が政策の内容・決定主体に影響する。以上の作業仮説に基づき、この3者の政策形成に及ぼす影響を分析、現地調査ではインタビューも実施した。その結果、以下のような結論を得た。旧体制を基盤とする廬泰愚大統領は、一定の改革を進めたが、結局は財閥に依存する開発を正当化した。NGOはキャンペーンで「改革政策」を争点化し国民世論を巻き起こしたが、「政治圏」には反映できなかった。金泳三大統領は政治圏での基盤が弱かったため、国民世論を重視してNGOに接近した。NGOの提示する政策を「議会を迂回する大統領緊急措置」で発動し、大統領府にNGO関係者を登用して、大統領府主導で一般国民にアピールする改革を行った。NGOの側も政策制定に関与して行政府に協力し、改革という目標を達成しようとした。行政府とNGOのパートナーシップが成立するが、大統領の個人的な意思に依存する関係であるため、大統領の翻意とともに挫折する。現在の金大中大統領もNGOの活動を促進しパートナーとして政策形成に関与させようとしているが、NGOは政権からの自律性を保ちながら影響力を行使する方向を模索しており、議会での圧力も重視するようになっている。
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Research Products
(1 results)