1999 Fiscal Year Annual Research Report
景気循環と労働市場: ミクロ的ショックとマクロ的ショックの重要性
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11730008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 助教授 (30227532)
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Keywords | 経済成長 / 景気循環 / 時系列分析 / 再配分ショック / ショックの異質性 / 雇用機会の創出・喪失 |
Research Abstract |
1.日米の「実質GDP」,「雇用者数」,「労働力人口」の3変数を用いたVAR(多変量自己回帰)モデルを推計し,ショックに関する同時点相関に制約条件を課すことで,「マクロ的ショック(aggregate shocks)」,「(労働)再配分ショック(reallocation shocks)」,「労働供給ショック(labor supply shocks)」の経済変動にとって基本的な3つのショックに分解する方法を考案した.制約は,技術進歩がある場合のマクロ生産関数のパラメータおよび再配分ショックは同時点内で労働供給に影響しないというものである.ショックの分解の準備として,上記3変数間に共和分関係が存在することを検定し,それら長期関係が「確立的成長モデル」の含意と,日本においては整合的であるが,アメリカにおいてはそうではないことを確かめた.現在,その理由を「内生的経済成長の理論」を用いて解釈できるかを検討している. 2.労働省「雇用動向調査」の再集計により,1986年以降の日本の雇用機会の創出・喪失に関する分析を行った.まず,同調査における「推計乗率」の変化の情報から,雇用機会の創出・喪失を事業所の開設・廃止による部分と,存続事業所内で生じる部分に区別する方法を考案して推計をおこなった.その結果,前者の変動が後者に比べて大きいこと,雇用機会の創出にとっては事業所開設が重要であることを見出した.また,雇用機会の創出・喪失の動向の相違を,企業規模別,産業別,フルタイム・パートタイム労働者別に詳しく行った.さらに,その動向は,企業規模・産業部門間において異なるだけではなく,「産業中分類」に従い細分化された産業部門内についてみても,事業所間の異質性が高く,全産業計の雇用純増率のクロス・セクション分散の90%以上が,事業所に特有の「個別ショック(idiosyncratic shocks)」によることを確認した.
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