2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11730015
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大和 毅彦 東京都立大学, 経済学部, 教授 (90246778)
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Keywords | 社会的ジレンマ / ゲーム理論 / メカニズム・デザイン |
Research Abstract |
各人が自己の私益を優先する行動をとっているために,結果として社会全体にとっての共益が損なわれてしまっているような状況は「社会的ジレンマ」と呼ばれる.例えば,大気中のオゾン層を破壊するフロン,車の排気ガスに含まれる窒素酸化物や浮遊粒子状物質,ダイオキシン,地球温暖化を引き起こす温室効果ガスなどの削減問題といった社会的ジレンマは,早急に解決を求められている.自分だけ排出しても影響は少ない,自分だけで削減しても効果がないと考えるため,全員が環境破壊を導く行動をとってしまうのである. これまでの社会的ジレンマに関する理論的研究は,実際の問題を解決する有効な社会制度・メカニズムを提示するには至っていないと思われる.なぜなら,問題解決のために従来提唱されてきたメカニズムでは,全員が参加することが暗黙のうちに仮定されており,自発的参加の問題が十分に考慮されていなかったからである.そこで,社会の構成員全員が自発的に参加するか否かを決定できる状況を考え,参加のインセンティブを常に持つようなメカニズムを作ることは不可能であることを示した.さらに,この参加のインセンティブに関する理論を実験室で検証した.参加ゲームに関する実験で,被験者たちは理論予測とは異なる行動を取った.実験では,メカニズムに参加した被験者の多くが,自己の利得を犠牲にしてまでも,不参加を選択した人の利得が下がるような戦略を選んだのである.このような報復的な行動により,不参加によって大幅な利得を得ることを阻止するメカニズムが自然に発生し,これが引きがねとなり協力が生まれたのである.
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[Publications] 大和毅彦: "ゲームと実験"OR辞典2000. (2000)
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[Publications] 戒能一成,西條辰義,大和毅彦: "京都議定書上の排出量取引等に対するEUの数量的制約の経済学的帰結"エネルギー・資源. 21. 38-42 (2000)
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[Publications] Funaki,Y.and Yamato,T.: "The Core and Consistency Properties"International Game Theory Review. 近刊. (2001)
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[Publications] 西條辰義,大和毅彦: "公共財供給"中山・船木・武藤 編著『ゲーム理論で解く』有斐閣. 29-45 (2000)