1999 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な発展と共有地の悲劇に関する研究-地球環境問題の経済分析-
Project/Area Number |
11730017
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
赤尾 健一 早稲田大学, 社会科学部, 助教授 (30211692)
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Keywords | 持続可能な発展 / 環境問題 / 自然の自浄能力 / 共有地の悲劇 / 資本市場 / 協力解 / マルコフ完全ナッシュ均衡 |
Research Abstract |
2年次にわたる研究の1年目として、本年度は以下のことを明らかにした。 1)持続可能な発展に関して:Stokey(1998)やAghion and Howitt(1998)で示された環境問題が存在する経済で持続的成長が生じる条件の構造を調べ、そこで扱われていない問題が、消費活動もまた環境問題を引き起こすケースであることがわかった。その現実社会での対応物はゴミ問題であり、それは環境クズネッツカーブが確認されていない(先進国でも問題改善の傾向がみられない)代表的問題である。このケースでは、felicityのcurvatureは持続可能性の決定的要因ではなくなる。その決定的要因は、自然の自浄能力が持続的に高まることである。つまり自浄能力を補助する技術の持続的R&Dの重要性が明らかになった。 2)共有地の悲劇からの脱出について:資源ゲーム(微分ゲーム)の設定で、資源の私有化が不可能が、望ましくない状況でも、政府が関連する資本市場を開設することで、効率的な資源利用・消費経路を経済が辿れることを明らかにした。資源がstock効果をもたないケースでは、この対策によってプレーヤー間の資源をめぐる戦略的依存関係は完全に消し去ることができ、効率的経路のみが実現可能となる(プレーヤーがfelicityと割引率に関して異質なケースを考察。実現しようとしている効率的経路が内点であることが要請される)。一方、stock効果をもつケースでは戦略的依存関係が完全に消えることはない。このため、得られる結果は弱いものとなるが(プレーヤーが同質なケースにおいて)効率的経路はひとつの対称Markov perfect Nash均衡として実現できることがわかった。 以上の結果の数学的細部を検討すること、2)のstock効果をもつケースで、この対策が他のNash均衡のいくつかを排除できるかどうかを調べることが次年度の課題である。
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