1999 Fiscal Year Annual Research Report
生物学的見地を取り入れたエージェントベースの経済モデルによる福祉制度の探究
Project/Area Number |
11730036
|
Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
河合 勝彦 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 助教授 (70278274)
|
Keywords | 経済シュミレーション / エージェントベースモデル / 協調モデル |
Research Abstract |
経済学における現在の分析手法の主流は、分析を目的とする経済の状況を、できるだけ単純な仮定により設定し、その仮定に立脚した数理経済モデルを演繹的に解くことにより、明示的な反証可能命題を導出することにあるとされる。ここで、数理経済モデルによる現実経済の単純化は、モデルにおける解の導出可能性を保つためには、当然必要なものとされている。 さらに、数理経済モデルにおける経済主体のモデル化は、合理性の仮定(合理的選択理論)に基づいておこなわれているが、この合理性の仮定だけでは、相互扶助行動を含めた人間の多様な行動様式を説明することには限界がある。例えば、人間が他の人間を助けるのを説明するために、合理的選択理論では、その経済主体の選好がたまたま援助行動を選ぶようなものだったというアドホックかつ自家憧着な説明をする他ない。 もちろん、近年のゲーム理論および情報の経済学の発展により、多種の経済主体が存在する状態での戦略的行動様式をモデル化することはある程度可能になったが、経済主体の種類を増やすことは、定常状態における均衡解の存在を証明することを非常に困難にするという弱点がある。 本研究は、上記にあげた従来モデルの計算可能性を中心とする限界的側面を明らかにし、エージェントベースの経済シミュレーションモデルの構築を提言するものである。その手法として、電子計算機上に多様な経済エージュエントからなる仮想経済を構築することにより、頻度依存型の生態環境における人間の適応的行動(特に相互扶助)の進化を動学的側面から観察する。エージュエントベースモデルは、人間の認知的および生態学的側面を重視するが、これは従来の公共政策の限界性を見出すためには今後さらに探求されるべき側面であろう。
|
Research Products
(1 results)